弁護ハック!-若手弁護士によるライフハックブログ

「弁護士 × ライフハック × 知的生産」をテーマに、若手弁護士が日々の”気付き”を綴ります。

弁護士の面接技法(新人弁護士研修資料「第2 各論 ~コアとなるスキル・マインド~」)

全体目次

第1 総論 ~弁護士という仕事について~
1 「仕事」とは何か?
2 弁護士が顧客に提供する「価値」とは何か?
3 期待に応える弁護士になるには

第2 各論 ~コアとなるスキル・マインド~
1 「代理人」としてのあり方
2 弁護士の面接技法
3 弁護士の交渉術
4 法律文書作成

第3 終わりに ~新人の皆さんに伝えておきたいこと~
1 仮説形成と仮説検証が何よりも大切
2 ロジカル・シンキングはあらゆる仕事の基礎
3 「何のために弁護士の仕事をするのか?」に対する回答を見つけてほしい

 

⑴ その面接の目的を考えること

 次に、私が皆さんに身に付けてもらいたいと考えるスキルは、法律相談や打合せを始めとする面接技法である。そして、私が面接において最も重要だと考えるのは、事前にその面接の目的を考えておくことである。

 法律相談を例に挙げると、その相談が受任見込みのものであれば、相談者との面接の目的はひとまず受任することにあるといえる。そして、実際の面接は、かかる目的から逆算して組み立てられることになる。例えば、相談者から委任の意思表示をもらうためには、当該相談に対する解決方針を教示し、これに納得してもらう必要があるだろう。また、解決方針に納得したとしても、費用が予算以内でなければならないだろうから、弁護士費用を教示する必要もある。そして、解決方針や弁護士費用を決定するためには一定の事実を聴き取る必要があり、そのような聴き取りの時間と回答の時間とをどのように配分するかを考えておく必要がある。

 これに対し、受任の見込みのない相談であれば、相談者との面接の目的は、疑問事項の解消や他の相談先の教示等となる。そして、実際の面接は、かかる目的から逆算して組み立てられることになるため、先のような受任見込みの法律相談の場合とは構成も異なってくることとなる。

 いずれにせよ、目的を考えることなく漫然と面接をしていては、望むべき結果を得ることはできないし、時間も浪費することになる。

 

⑵ 法律事務の専門家が持つ3つのツール

 さて、具体的な面接の技法に移っていこう。

 弁護士が相談者や依頼者などと面接をする場合、多かれ少なかれ事実の聴き取りと分析が欠かせない。その際に弁護士が用いるツールが、時系列、関係図、要件事実という3つのツールである。

 時系列は、各事実の先後関係や因果関係を明らかにしたり、場合によっては時効等の要件事実にもかかわるため重要である。そのため、事実の聴き取りにおいては、原則として時系列に沿って聞くことが重要であり、各事実と年月日とを常にセットで聞いていく姿勢が求められる。

 関係図は、登場人物同士の法律関係を俯瞰的に分析するために必須のツールとなる。したがって、面接の最初の段階で必ず基本的な登場人物(名)を確認しておくべきである。

 要件事実は、聴き取りに漏れがないかどうかをチェックするツールとして有効である。例えば、権利の行使に際して意思表示が必要となるもの(例えば錯誤による取消しや債務不履行による解除)については、その原因となる事実だけでなく、意思表示をいつ・誰に対し・どのような方法で行ったかを確認しておく必要がある。


⑶ 傾聴の技術

 さて、前項で述べた3つのツールは、事実の聴き取りに必要となるものである。これに対し、弁護士の行う面接にはもう一つの側面が必要となることも多い。それは、相談者・依頼者に対する傾聴(active listening)である。

 傾聴の技術については、カウンセリングに関する書籍に詳しく書かれているため、次項に掲げる参考書籍等を読んでもらいたい。ただ、ここで一点だけ述べるとすれば、重要なのは相手の立場になって聴くということでないかと思う。そして、そのような姿勢が作れているのであれば、適切なタイミングでの相槌、アイコンタクト、共感の表現、行動の同調、リラックスした雰囲気作りといったカウンセリングの技術と呼ばれるものは、自ずと発現されるのではないかと思う。

 

⑷ 参考書籍等

・菅原郁夫・岡田悦典 編/日弁連法律相談センター面接技術研究会 著
『法律相談のための面接技法―相談者とのよりよいコミュニケーションのために』
(商事法務)
・杉原保史『プロカウンセラーの共感の技術』(創元社
・弁護士のための面接技術~ワンランク上の法律相談技法~(日弁連会員限定)

https://kenshu.nichibenren.or.jp/product/detail.php?pid=297

「代理人」としてのあり方(新人弁護士研修資料「第2 各論 ~コアとなるスキル・マインド~」)

全体目次

第1 総論 ~弁護士という仕事について~
1 「仕事」とは何か?
2 弁護士が顧客に提供する「価値」とは何か?
3 期待に応える弁護士になるには

第2 各論 ~コアとなるスキル・マインド~
1 「代理人」としてのあり方
2 弁護士の面接技法
3 弁護士の交渉術
4 法律文書作成

第3 終わりに ~新人の皆さんに伝えておきたいこと~
1 仮説形成と仮説検証が何よりも大切
2 ロジカル・シンキングはあらゆる仕事の基礎
3 「何のために弁護士の仕事をするのか?」に対する回答を見つけてほしい

 

⑴ はじめに

 さて、前項までで弁護士という仕事やスキル・マインドの習得方法の総論について理解してもらえたと思う。そこで、ここからは私が勤務弁護士である皆さんに特に身に付けてもらいたいと考えるスキル・マインドについて各論的に述べていくこととする。

 私が、弁護士としてまず身に付けてほしいと考えるマインドは、代理人」としてのあり方である。なぜなら、法律紛争には各当事者の「立場」があり、我々弁護士はいずれかの立場を代表して紛争解決に当たるものである以上、自分が誰の「代理人」であり、権利・利益を代表しているかということを常に意識しなければならないからである。そして、ここでは、「代理人」としてのあり方について、①弁護士の持つ代理権の意義、②法律事務の専門家としての役割、③依頼者の期待という三つの側面から考えてみたい。

 

⑵ 弁護士の持つ代理権の意義

 弁護士の持つ代理権の内容について、明確に定めた法律の規定は存在しない。しかし、日頃実務に携わっていて実感するのは、弁護士は当該案件については時に依頼者本人以上の包括的な権限と裁量を有しているということである。

 その理由は、第一に、弁護士は当該案件についての交渉窓口となるのが基本であり、情報を独占する地位にあるためである(もちろん、依頼者に対して報告義務を負うことは当然である。)。

 また、第二に、法律の知識や実務の経験を持たない依頼者にとっては、弁護士から提供される情報に基づいてゼロベースでの意思決定をすることが難しいことが多く、多かれ少なかれ弁護士の示唆する方針に則った意思決定をせざるを得ないからである。そのため、弁護士は当該案件の意思決定にとって極めて重要な役割を演じることになるし、依頼者もそのような役割を期待していることが多い。
そして、このように弁護士は時に依頼者本人以上の包括的な権限と裁量を有する以上、その地位を単なるアドバイザーやコンサルタントと理解することは不十分と言わなければならない。むしろ、弁護士はいわば依頼者の分身ともいうべき存在であり、依頼者のために主体的に活動することが求められるのである。

 

⑶ 法律事務の専門家としての役割

 では、依頼者の分身ともいうべき我々弁護士は、具体的にどのような活動をすべきなのか。

 ここで忘れてはならないのは、我々弁護士は法律事務の専門家として国家資格を付与されていることであり、依頼者もそのような専門性に期待して我々に依頼をしているということである。そのため、我々弁護士の基本的な役割とは、法律、判例、要件事実、事実認定論といった法的なツールを駆使することによって、案件を依頼者にとって有利な形で解決することにある。

 そして、案件を依頼者にとって有利な形で解決するにあたっては、時に依頼者自身を説得したり、場合によっては誘導したりする必要が出てくることがある。なぜなら、依頼者自身は、法律の知識や実務の経験を持たないため、自分にとって本当に有利な解決が何かということを知らない場合があるためである。その意味において、弁護士は決して依頼者の言いなりであってはならず、法律事務の専門家として本人から独立しつつ、本人を補完する存在でなければならない。

 

⑷ 依頼者の期待

 とはいえ、依頼者の意見と対立してばかりいる弁護士が優秀だとは決して言えないであろう。なぜなら、そのような弁護士は依頼者が「顧客」であることを忘れていると言わざるを得ないからである。

 すなわち、依頼者が「顧客」である以上、弁護士は究極的には依頼者の期待に応え、満足をもたらす存在でなくてはならない。

 具体的には、依頼者の示す案が「第一の道」、相手方の示す案が「第二の道」であった場合、弁護士は法律事務の専門家として、依頼者と相手方の双方が合意できるような「第三の道」を示すことがある。しかし、その「第三の道」とは決して中立的な案ではなく、依頼者にとって最大限に有利な案でなくてはならない。弁護士の仕事は依頼者ありきの仕事であり、どのようにすれば依頼者の希望を叶えられるかを知恵を振り絞って考えることこそ、依頼者の分身である弁護士に求められるもう一つの側面だと考える。

 なお、弁護士がそのような仕事を心掛けていれば、依頼者は弁護士を信頼できるパートナーとみなしてくれる。そして、依頼者は、弁護士のことをパートナーとして信頼することができたときにこそ、深い安心感を抱くのではないかと考える。なぜなら、依頼者は多かれ少なかれ人生や経営上の一大事に直面し、精神的に追い詰められている。しかし、そのような状況でも、信頼できる弁護士がいれば、依頼者は弁護士にその問題の対処と解決を委ね、平穏な日常を取り戻すことができるし、「自分には、自分の意思や利害を尊重してくれる心強い味方がいる」という事実自体が、追い詰められた依頼者にとっての心の支えになるからである。

 

⑸ 小括

 以上をまとめると次のとおりとなる。

 すなわち、弁護士は時に依頼者本人以上の包括的な権限と裁量を有する「依頼者の分身」たる存在である(①)。しかし、この「分身」は決して依頼者の言いなりであるべきではなく、法律事務の専門家として依頼者本人から独立しつつ、本人を補完する存在でなくてはならない(②)。もっとも、依頼者の期待を考えるときには、弁護士は、究極的には本人にとって心から信頼できるパートナーであることが望ましい(③)。

 なお、②の側面を「独立性」、③の側面を「随伴性」と仮に呼ぶとして、そのどちらを重視するかは各々の弁護士によって見解が異なると考えられる。すなわち、独立性と随伴性とを全くの半々とすることを心掛けている弁護士もいれば、独立性を明らかに重視する弁護士もいる。ただ、私について言えば、相対的に随伴性を重視する立場を採用しているつもりである(感覚的に独立性:随伴性=4:6程度であろうか)。すなわち、法律事務の専門家として依頼者本人とは独立した立場を取りつつも、原則として依頼者の希望を出発点として思考すべきと考えている。

 

期待に応える弁護士になるには(新人弁護士研修資料「第1 総論 ~弁護士という仕事について~」)

全体目次

第1 総論 ~弁護士という仕事について~
1 「仕事」とは何か?
2 弁護士が顧客に提供する「価値」とは何か?
3 期待に応える弁護士になるには

第2 各論 ~コアとなるスキル・マインド~
1 「代理人」としてのあり方
2 弁護士の面接技法
3 弁護士の交渉術
4 法律文書作成

第3 終わりに ~新人の皆さんに伝えておきたいこと~
1 仮説形成と仮説検証が何よりも大切
2 ロジカル・シンキングはあらゆる仕事の基礎
3 「何のために弁護士の仕事をするのか?」に対する回答を見つけてほしい

 

⑴ 依頼者の評価が先か、ボス弁の評価が先か?

 以上を要するに、依頼者との関係では、仕事を迅速かつ正確に処理することによって「経済的利益」をもたらすとともに、その心情に寄り添って「安心」を与える弁護士こそが優秀な弁護士だと考える。また、ボス弁との関係でいえば、仕事を迅速かつ正確に処理することによって事務所に「経済的利益」をもたらすとともに、ボス弁との「師弟関係」を基礎として絶えずスキルやマインドを高めていける人こそが、優秀な勤務弁護士(少なくともボス弁としてはありがたい勤務弁護士)であると考える。

 では、どのようにすれば上記のような勤務弁護士になることができるのか?言い方を変えれば、勤務弁護士はまず依頼者からの評価を目指すべきか、それともボス弁からの評価を目指すべきか?

 

 その答えはズバリ、まずはボス弁に評価される弁護士を目指すのが早道であると考える。

 そのように述べる理由は、決してボス弁が皆さんの直接の顧客だと考えるからではない。また、ボス弁のご機嫌を取れさえすればクビになる心配がないためでもない。上記のように述べる理由は、仮にもボス弁がまともな弁護士であるならば、ボス弁に評価される仕事とはすなわち依頼者に評価される仕事を意味するからである。

 

 以上のことを図式にしたのが次の図1である。

 

<図1>

 

ボス弁の評価○

ボス弁の評価×

依頼者の評価

   A

   C

依頼者の評価

×

   B

   D

当初の勤務弁護士の立ち位置

 


 図1において、弁護士登録当初の勤務弁護士の立ち位置は、程度の差こそあれ「D」である。なぜなら、新人の弁護士は法律の基礎知識を知ってはいるものの、実務のスキルを欠くため、そのままでは依頼者やボス弁の評価を得るような仕事をすることはできないからである。そのため、ボス弁は、新人弁護士に対して様々な方向から指導・育成をし、実務のスキルを授けていく必要があるのである。

 このとき、ボス弁と新人弁護士が目指すべきは、言うまでもなく「D」→「A」のルートである。そして、ボス弁がまともな弁護士であり、かつ、新人弁護士がボス弁の指導・育成に素直に従う[1]のであれば、「D」→「A」のルートは円滑に実現される。なぜならば、繰り返しになるが、ボス弁に評価される仕事とはすなわち依頼者に評価される仕事を意味するからである。

 これに対し、新人弁護士がボス弁の能力を信頼することができていないと、新人弁護士は「D」→「C」のルートを目指してしまうことがある。しかし、ボス弁がまともな弁護士であった場合、ボス弁に評価されない仕事とは依頼者にも評価されない仕事であるから、結局その新人弁護士は「D」の領域から脱することができないのである。

 なお、ボス弁が三流の弁護士であった場合、ボス弁の評価する仕事が依頼者に評価される仕事とは限らないため、「D」→「B」のルートを辿る可能性がある。そのような場合にはできる限り早期の移籍を勧めたい。


⑵ ボス弁に評価される仕事をするためには?

 いずれにしても、新人弁護士にとって重要なのは、まずはまともなボス弁に雇用されることである。そして次に、そのボス弁に評価されるような仕事をすることを通じて、依頼者に評価される仕事をすることである。

 では、ボス弁に評価されるような仕事をするために、具体的に皆さんは何を心掛ければよいのか?

 ボス弁のイエスマンになる?いや、そうではない。

 ボス弁に評価される勤務弁護士とは、結局のところ、ボス弁の求めるスキルやマインドを兼ね備えた勤務弁護士のことである。そのため、ボス弁に評価される仕事をするためは、ボス弁の求めるスキルやマインドを如何に効率的に習得するかが何よりも重要となるのである。

 

 では、どうすればボス弁の求めるスキルやマインドを効率的に習得することができるのか?次の図2は、「暗黙知」と「形式知」の観点から、スキル・マインドの習得方法を表したものである。

 

 


 図2でいう暗黙知」とは、言語化することが難しい知識のことを指し、いわゆる経験や勘に基づいて行われる実践上の知恵を指す。また、形式知」とは、言語化され、客観的に説明することのできる知識のことを指す。そして、重要なのは、仕事のおいて必要となる知識の大半は「暗黙知」の領域に属し、「形式知」は氷山の一角に過ぎないということである[2]

 さて、ボス弁は、自身の持つ「暗黙知」の一部を「形式知」に変換した上で、新人弁護士である皆さんに教えると思う(①)。また、そのような「形式知」を伝えた上で、新人弁護士に実際の仕事を繰り返しやらせてみて、「暗黙知」の定着を図ると思う(②)。しかし、先に述べたように、仕事のおいて必要となる知識の大半は「暗黙知」の領域に属する以上、①と②の習得方法のみでは、新人弁護士が獲得することのできるスキル・マインドは限定的なものにとどまり、いわば成長の遅れが生じてしまう。そのため、私は、新人弁護士である皆さんに対し、①、②とは異なる主体的な方法を勧めたいと思う。

 その一つが「暗黙知」→「形式知」というスキル・マインドの習得方法であり、これを「盗む」と表現する(③)。すなわち、ボス弁の仕事を注意深く観察することにより、ボス弁があえて「形式知」に変換しない「暗黙知」の存在に気付き、その「暗黙知」を皆さん自身の頭で「形式知」に変換するのである。

 これを実践する具体的な方法は、物事をよく観察すること、そしてメモを取ることではないかと思う。すなわち、ボス弁の仕事を注意深く観察し、何か驚くことが起こった瞬間に、その出来事を招来した因果関係と考えられるものを言語で記述するのである。例えば、私の元ボス弁であった先生は、まるでエスパーのように未来を言い当てることがあった。しかし、そのような出来事が何度かあった後で、私は気付いた。先生が未来を言い当てることができるのは、単に直感によるものではなく、周囲の出来事をつぶさに観察し、記憶した上で、それらの因果関係を理解し、推論を働かせているからだということに。それからというもの、私は、先生に倣って、周囲の出来事をよく観察し、記憶し、因果関係について想像し、将来起こることを推論することを習慣化してきた。

 そして、もう一つの方法は、「暗黙知」→「暗黙知」というスキル・マインドの習得方法であり、これを「真似る」と表現する(④)。すなわち、先に述べた「盗む」(③)は効果的なスキル・マインドの習得方法であるものの、実際には「形式知」に変換することが難しい「暗黙知」も数多く存在する。そのような場合において、師匠の「暗黙知」をそっくりそのまま習得してしまう方法が「真似る」である。私もまた、特に話し方や文章の書き方について元ボス弁の先生のスタイルを真似させていただいたつもりである。

 なお、この「真似る」は、新人でもその一瞬に限っては直ちに師匠と同じレベルに到達することができるため、最も効率的なスキル・マインドの習得方法といえるかもしれない。

 

 ところで、ボス弁に評価される勤務弁護士を目指せなどと聞くと、皆さんの中には次のような疑問を抱く人がいるかもしれない。すなわち、そのような方法では良くてボス弁のカーボンコピーが出来上がるだけであり、ボス弁とは異なる個性を持ち、ある面ではボス弁を超えるような弁護士にはなれないのではないかと。

 そのような疑問に対する私の答えは、否である。なぜなら、ボス弁と異なる個性やボス弁を超える能力は、ボス弁と肩を並べる程度になってから身に付けていくべきものだからである。

 実際に、武道や伝統芸能の世界では、守・破・離という思想が語られている。すなわち、「守」とは師や流派の教え、型、技を忠実に守り、確実に身につける段階。「破」とは他の師や流派の教えについても考え、良いものを取り入れ、心技を発展させる段階。「離」とは一つの流派から離れ、独自の新しいものを生み出し確立させる段階というものである。

 そして、社会人の成長過程においても、守・破・離の思想は妥当するものと考える。そのため、新人である皆さんには、まず「守」を徹底的にやってほしいと思う。

 

 

[1] 言うまでもなく、そのためには「師弟関係」が定まっている必要がある。

[2] このことは、機械化・自動化が進む現代においてなお、人間による知識労働が残っている所以でもある。

弁護士が顧客に提供する「価値」とは何か?(新人弁護士研修資料「第1 総論 ~弁護士という仕事について~」)

全体目次

第1 総論 ~弁護士という仕事について~
1 「仕事」とは何か?
2 弁護士が顧客に提供する「価値」とは何か?
3 期待に応える弁護士になるには

第2 各論 ~コアとなるスキル・マインド~
1 「代理人」としてのあり方
2 弁護士の面接技法
3 弁護士の交渉術
4 法律文書作成

第3 終わりに ~新人の皆さんに伝えておきたいこと~
1 仮説形成と仮説検証が何よりも大切
2 ロジカル・シンキングはあらゆる仕事の基礎
3 「何のために弁護士の仕事をするのか?」に対する回答を見つけてほしい

 

 前項では、弁護士にとっての顧客とは、第一に受任事件の当事者である依頼者であり、第二に雇用主であるボス弁であると述べた。

 そこで、次に顧客たる依頼者・ボス弁のそれぞれの立場から弁護士に対してどのような「価値」が期待されているかを考えてみよう。

 

⑴ 依頼者が弁護士に期待する「価値」

 まず想像してみよう。

 

 依頼者は結婚10年目の男性。最近、妻から離婚を切り出され、妻と子どもは自宅を出て別居してしまった。そして、妻は間髪入れずに弁護士を立て、自分に対して慰謝料と財産分与を請求してきている。どうやら妻は自分がモラルハラスメントを行ったと主張しているようだ。財産分与については、妻との共有財産を分けるものであるし、今後の子どもたちの生活にも必要である以上、正当な内容であれば応じるつもりである。しかし、妻側の弁護士が要求してくる内容はあまりに不公平なようだ。それに、妻とは喧嘩が絶えなかったものの、原因は妻側にもあるし、一方的なモラルハラスメントとして慰謝料を請求されるのは心外だ。自分としては妻側の弁護士に反論したいことは山ほどある。だけど、こういったことは初めてで、どうやって対処すればいいのかわからない。ストレスで胃がどうにかなりそうだ・・・。誰か信頼の置ける弁護士さんを僕も見つけないと・・・。

 

 

 上記の事例で、依頼者(仮に「Aさん」としよう。)は弁護士にどのような「価値」を期待するのだろうか?私は次のように考える。

 まず、依頼者は一定の「経済的利益」を期待している。上記の事例に照らしていえば、Aさんは妻に対して支払う慰謝料が少なくなる(できればゼロになる)ことを望んでいるし、財産分与を正当な金額にすることを望んでいる。また、親権や面会交流を「経済的利益」と言えるかには難しい部分があるが、少なくとも依頼者が多額の弁護士費用を支払ってでも得たい利益・成果だと考えるならば、それらを「経済的利益」の範囲に含めることも可能であると考える[1]

 そして、我々弁護士は、基本的に依頼者に「経済的利益」をもたらすことを通じて報酬を得ている。なぜなら、日弁連の旧報酬規定をはじめ、弁護士報酬の算定は「経済的利益」の金額を基準として行われるためである。

 

 しかし、だからといって、依頼者の期待は「経済的利益」に尽きるものではないと私は経験的に考える。なぜなら、依頼者の中には、支払う弁護士費用が自らの得るであろう「経済的利益」に見合わないような場合(いわゆる赤字の場合)においても、弁護士に依頼したいと考える人が一定数いるからである。では、彼らが弁護士に期待する価値とは一体何だろうか?

 私は、彼らの期待するもう一つの価値とは、「安心」であると考える。すなわち、Aさんは、突然妻子が自宅を出ていってしまうという、人生において非常に深刻な出来事に直面することになった。しかも、彼の下には妻側に就いた弁護士から内容証明郵便などで高圧的な通知書が届き、胃の痛む思いをしている。離婚事件に限らず、法的紛争に巻き込まれた当事者というのは、そのような強いストレスに見舞われるのが通常であると考えられる。

 そして、当事者の中には、ストレスによって仕事が手に付かなくなったり、健康を害してしまう人がいる。また、悲しいことに、紛争をきっかけにして自死の道を選んでしまう人もいる。だから、当事者の中には、「経済的利益」を多少譲ったとしても、紛争から逃れ、安心ある生活を取り戻したいと願う者がいる。そのため、我々弁護士には、依頼者の心情に寄り添い、「安心」をもたらす役割が求められるのである。

 

 以上をまとめると、依頼者は「経済的利益」と「安心」の両方を提供してくれることを弁護士に対して期待しているのではないかと考える。なお、前者と後者のうちどちらを重視するかは、依頼者の性格や事件の性質によるところが大きい。しかし、我々弁護士としては、少なくとも両者に重要性を認めた上で、依頼者の意向に沿って両者を最大化することを目指すべきであるように思う。

 

⑵ ボス弁が勤務弁護士に期待する「価値」

 さて、次にボス弁が勤務弁護士に期待する「価値」とは何だろうか?私は次のように考える。

 まず、ボス弁もやはり「経済的利益」を期待している。すなわち、有り体に言えば、勤務弁護士が事務所に在籍していることによる利益が、勤務弁護士に対して支払う給与と諸費用の合計額を(できる限り多く)上回ることを期待している。

 もっとも、ここで留意しなければならないのは、「勤務弁護士が事務所に在籍していることによる利益」というのは、その人が事件を処理することを通じて得られる売上に限られるものではないということである。すなわち、皆さんが事件を処理することによって仮に売上が生じなかったとしても、皆さんが費やした時間の分だけボス弁が別の仕事を処理したり、ライフワークに時間を割くことができたのであれば、それは十分な利益ということができる。また、見方を変えれば、皆さんが事務所に在籍している事実自体が事務所に一定の利益をもたらしているともいえる。なぜなら、弁護士が多数所属している事務所というだけで、顧客の獲得や人材の採用の面で有利な効果を得ることができるからである。そのため、「勤務弁護士が事務所に在籍していることによる利益」とは、専ら客観的に算定できるものではなく、ある程度主観的なものだといえる。

 しかし、いずれにしても、ボス弁も一介の経営者である以上、損得勘定から自由でいることはできない。なぜなら、ボス弁には社員や家族の生活を支える責任があるからである。そのため、ボス弁としては、勤務弁護士が客観的にも主観的にも「経済的利益」を満たすような働きをしてくれると非常にありがたいのである。

 ただし、上記のことは、勤務弁護士の片務的な努力を要求するものではない。むしろ、ボス弁は勤務弁護士が「経済的利益」を満たすことができるように仕事の割り振りを工夫したり、スキルアップを支援したり、体制を整えたりする責任を負っている。そのようにして、ボス弁と勤務弁護士が双務的に「経済的利益」の実現を目指すような形が理想であると考える。

 

 さて、いわゆる「弁護士ビジネス」の法律事務所であれば、ボス弁が勤務弁護士に期待する価値は「経済的利益」に尽きるのかもしれない。しかし、ボス弁が職人気質であり、弁護士の仕事にこだわりを持つ人であればあるほど、勤務弁護士に対しては別の期待を持つように思われる。それは「師弟関係」という価値である。

 ボス弁になるような人は、その前段階において一定の事件処理能力を身に付けている[2]。そのため、彼にはいわゆるSolo Practitionerとして弁護士の人生を突き通す選択肢もあったはずである。それでもなお、彼が勤務弁護士を雇い、「ボス弁」になろうとしたのはなぜだろうか。

 もちろん、その動機は人それぞれであろう。あくまで「経済的利益」が動機であるかもしれないし、事務所の拡大そのものが動機かもしれない。しかし、彼が弁護士の仕事にこだわりを持つ人である場合、「ボス弁」になろうとした動機の一つには、自分が身に付けたスキルを後輩弁護士に伝えたいという動機が少なくともある程度含まれているのではないかと思う。

 ところで、勤務弁護士である皆さんからしたら、「師弟関係」など暑苦しいし、煩わしいと思うかもしれない。しかし、一度立ち止まって考えていただきたい。もし皆さんがどのような職場(法律事務所、企業、行政など)に入ったとしても、仕事上、最も緊密な関係を持つことになるのは結局は直属の上司なのである。よって、皆さんが仕事を楽しむことができるかどうかや仕事を通じて成長することができるかどうかは、否応なく直属の上司との人間関係に左右されることになるのである。だとすれば、その直属の上司と望ましい人間関係を結ぶほうが間違いなく皆さんにとって利益ではなかろうか?

 そして、直属の上司との望ましい人間関係とは、決して友達のような関係ではない。それは(互いに)育て・育てられる人間関係のことであり、すなわち「師弟関係」である[3]

 そして、上司の多くは、「弟子」と認識した人に対してはスキルの全てを教えてくれるのではないかと思う。また、「弟子」のしでかしたミスには寛容な態度を取るのではないかと思う(見かけは厳しいこともあるかもしれないが)。なぜなら、多くの上司にとって「弟子」を持つこと自体に固有の価値があるからであり、それは「次の世代に何かを残したい。次の世代を育てたい」(世代継承性)という人間にとって普遍的な心理に基づくのではないかと思う。

 

 

[1] なお、弁護士報酬の算定の際、親権や面会交流といった算定困難な利益を一定の「経済的利益」と擬制した上で報酬算定をすることは一般に行われている。

[2] ただし、ボス弁となった後、事件処理から長年離れてしまい、その能力自体を失ってしまった人も一定数いることは事実である。

[3] 大久保幸夫『マネージャーのための人材育成スキル』(日本経済新聞出版)第6章。なお、「師弟関係」と呼ぶことに抵抗があるなら、メンターシップと言い換えてもよいと思う。

「仕事」とは何か?(新人弁護士研修資料「第1 総論 ~弁護士という仕事について~」)

全体目次

第1 総論 ~弁護士という仕事について~
1 「仕事」とは何か?
2 弁護士が顧客に提供する「価値」とは何か?
3 期待に応える弁護士になるには

第2 各論 ~コアとなるスキル・マインド~
1 「代理人」としてのあり方
2 弁護士の面接技法
3 弁護士の交渉術
4 法律文書作成

第3 終わりに ~新人の皆さんに伝えておきたいこと~
1 仮説形成と仮説検証が何よりも大切
2 ロジカル・シンキングはあらゆる仕事の基礎
3 「何のために弁護士の仕事をするのか?」に対する回答を見つけてほしい

 

⑴ はじめに

 弁護士の仕事について学ぶ前に、押さえておかなければならないことがある。それは、弁護士業も世の中に存在する数多くの仕事のうちの一つに過ぎないということである。

 そして、あらゆる仕事は、顧客に対して何らかの価値を提供し、その価値の対価を受け取ることによって成り立っている。

 このことには二つの含意がある。一つ目は仕事には「顧客」がいることであり、二つ目は仕事をする者は顧客に「価値」を提供することによって対価を得ているということである。

 まず第一の点であるが、これは学生(司法修習生を含む)と社会人とを隔てる違いである。すなわち、学生が勉強や学問をするのは、学校のためではなく、自分自身のためである。なぜなら、学生は学校にとっての「顧客」であり、サービスの「消費者」だからである。これに対し、社会人になった以上、皆さんは財やサービスの「生産者」にならなければならない。そのため、学生時代と異なり、皆さんは依頼者や会社(法律事務所)といった顧客に対して一定の「価値」を提供する責任を負っているのである。

 もちろん、会社(法律事務所)は、皆さんのような新人が社会人として自立するために皆さんを育成する責任を負っている。しかし、そのような関係を学生(消費者)と学校(生産者)の関係と混同してはならない。皆さんは既に社会人である以上、依頼者や会社(法律事務所)に対してしっかり「価値」を提供しながら、同時に成長していかなければならないのである。

 また第二の点であるが、社会人は顧客に「価値」を提供することによって対価を得ている。なお、ここでいう対価とは、言うまでもなく弁護士報酬のことであり、勤務弁護士にとっては給与のことである。

 社会人が顧客に提供するのは、決して時間や熱意ではない。なぜなら、顧客はそのようなものを望んでいないし、よほどの篤志家でもない限り皆さんの「頑張り」に対して対価を支払いたいとは思わない。皆さんがもし、長時間働いたり、一生懸命働くこと自体に価値を見出しているのだとすれば、それは自分目線を脱することができていない証拠である。これに対し、社会人は、常に顧客目線で考える習慣を持ち、顧客にとって価値があり、かつ、自分が提供できるものは何かということを深く洞察していなければならない。

 

⑵ 皆さんの「顧客」とは誰か?

 先ほど、弁護士業も世の中に存在する数多くの仕事のうちの一つに過ぎないこと、あらゆる仕事は顧客に対して何らかの価値を提供し、その価値の対価を受け取ることによって成り立っていること、そして皆さんも社会人になった以上、顧客に対して一定の「価値」を提供する責任を負っていることを説明した。

 では、弁護士が顧客に提供する「価値」とは何か?また、弁護士にとっての「顧客」とはそもそも誰なのか?

 前者については次項で述べるとして、ここでは後者について回答を示しておきたい。

 弁護士にとっての顧客、それは第一に、受任事件の当事者である依頼者その人である。これは一見すると当たり前のことのように思われる。しかし、残念ながら、弁護士の中には、依頼者を顧客として扱っていないかのような態度を取る者が少なからずいることも事実である。

 私の聞く限りでも、例えば、ある弁護士は依頼者からの連絡に何週間も出ず、その後連絡に出たと思ったら、依頼者に対し、「この件はあなたが僕に依頼したんだから、細かく報告を求めるんじゃなく任せて下さい!」と声荒く言い切ったらしい。また、ある弁護士は弁護士報酬のことを「(依頼者からの)慰謝料」と言ったり、「事件をやってやってるんだから、高い報酬をもらって当たり前」と言っていた。このような話は枚挙に暇がなく、もし皆さんがプロフェッショナルとしてキャリアを築いていきたいのであれば、ダークサイドに取り憑かれることのないように注意しなければならない。

 また第二に、勤務弁護士としてキャリアをスタートした皆さんにとって、雇用主であるボス弁護士や弁護士法人(以下「ボス弁」と総称する。)もまた重要な顧客であることを忘れてはならない。いわばボス弁は、皆さんにとっての「初めての顧問先」[1]であり、毎月相当な金額の「顧問料」を支払っている上客であるということを意識しなければならない。

 

 

[1] 東京弁護士会親和全期会編著『こんなところでつまずかない! 弁護士21のルール 新訂版』(第一法規)p.27以下

若手弁護士の独立・経営体験記Ⅱ

第1 はじめに

 お久しぶりです。

 私事ですが、2019年2月に旧事務所の経営を離れ、新たに「弁護士法人あらた国際法律事務所」を設立し、単独での事務所経営を開始しました。

 ところで、2017年に投稿した拙稿「若手弁護士の独立・経営体験記」*1において、私は次のように書きました。

これから独立開業するのであれば、可能な限り複数弁護士による共同経営を選択すべきと考えます。経費負担を分散することができる上、規模感を印象付けることは顧客開拓においても極めて有利だからです。

 

 そのように書いていた私が、その後、なぜ共同経営をやめ、単独経営に踏み切ったのか。そのことについて書いていきたいと思います。


第2 小規模単独経営から経費共同型経営へ

 話は、旧事務所を設立した2016年に遡ります。

 旧事務所の開設前、私と当時のパートナー弁護士は、それぞれ「レンタルオフィス」と呼ばれる小規模のテナント物件で細々と事務所を経営していました。どちらも事務職員は雇用しておらず、かかる経費といえば月6万円ほどのテナント賃料のほか、通信費、消耗品費程度でした。「小規模単独経営」とでもいうべきそのような体制は、固定経費が安いため*2、利益を上げることは比較的容易なことでした。

 他方で、独立直後の20代の私たちは、将来への理想に燃えてもいました。とりわけ、私に関していえば、新しい法律事務所を作りたい、業務改革を先導していきたいという想いを込めて、当時の事務所を「あらた法律事務所」と名付けており、事務所の発展によってそのような理想を実現していきたいと考えていました。ところが、レンタルオフィスの狭いスペース*3では、勤務弁護士はおろか、事務職員を雇用することすら困難といえました。また、当時の体制では、規模の大きい案件や一定の顧問先案件を取り扱うことにも困難がありました。そのため、事務所体制を拡大するとともに、そのことによって増大するオフィス賃料と人件費を按分して賄うために、経費共同型経営に踏み切ることは当時の経済的事情を省みれば極めて合理的なことでした。

第3 経費共同型経営の末路

 それから約3年間、私は経費共同型経営の事務所を運営してきました。その過程で実感したことは以下のとおりです。

 まず、経費共同型経営における大きな分岐点は、スタッフの雇用を原則として共同にするか、それとも個別にするかの点にあります。旧事務所は、スタッフの雇用を共同で行うという考えに立っていました。

    しかし、スタッフの雇用を共同にする場合、雇用条件、待遇、育成方針、業務指示の方法、各種手続の手間といった問題について、パートナー弁護士間に潜在的な利益相反を招くことになります。そのような利益相反は、事務所設立当初はほとんど無視し得るほど小さなものです。しかし、事務所の規模が大きくなるにつれ、利益相反の幅は広がる一方、パートナー間の経済的な意味での相互依存関係は弱まることが多いので、遅かれ早かれ利益相反が現実化することになります。

 これに対し、スタッフの雇用を個別にした場合はどうでしょうか。まず言えることは、スタッフの雇用を個別にする場合、経費共同型経営の最大のメリットともいうべき固定経費の按分が弱まることになります。また、各パートナー弁護士が個別にスタッフを雇用することによって、事務所内のバランスに複雑な変化をもたらすことにもなります。例えば、勤務弁護士1名と専属事務職員1名を雇用するパートナーと、スタッフを雇用しないパートナーとの間で、オフィス賃料、電話料金等は同額負担でよいのでしょうか。あるいは、売上規模または経費分担割合が異なるにもかかわらず、パートナー会議での議決権は1票ずつでよいのでしょうか。したがって、そのような非効率さや煩雑さを嫌い、最終的に各々が独立していくというシナリオに行き着くことが多いように思います。

 結局のところ、経費共同型経営というのは、財布と心を異にする複数の事業体間の取引(Transaction)であり、取引によるメリットがデメリットを上回る限りで成り立つ体制だというのが私の理解です。私は経費共同型経営を否定しませんし、自分の経験に照らしても必要な過程だったと考えていますが、純粋な経費共同型によって永続的で組織的な事務所を組み立てることは不可能だと考えています。すなわち、そのような体制は離合集散を繰り返すか、あるいはいつまでも個人的規模にとどまるかのいずれかの道を辿る可能性が高いと考えています*4

 旧事務所もまた、行き着くところまで行き、明らかに共同経営によるデメリットがメリットを超えてしまっていました。そのため、分裂は必然の結果といえるものでした。


第4 再び単独経営へ

 さて、数年ぶりに単独経営に戻ってみて、共同経営と比べたメリットに改めて気付くこととなりました。

 まずは、何といっても意思決定が迅速だということです。旧事務所の頃は、新しい設備やサービスを導入しようとするたび、パートナー会議に諮り、その総意を取る必要がありました。特に、経費共同型経営においては、構造的に、お金のかかる提案は通りにくいという問題がありました。そのため、今回、単独経営になったことによって、単純に意思決定が早くなっただけでなく、将来に向けた投資を積極的に行うことが可能になりました。

 また、共同経営を維持するための煩雑なタスクから解放されました。特に、旧事務所では、月に一度、共同経費の清算という作業が必要であり、これを行うのは主に総務を取り仕切り、最も多く立替え払いをしている私の役目でした。単独経営になってからは、そのような煩雑な作業がなくなり、会計が随分と簡素化しました。

 さらには、経費共同型経営と比べて、収支における損失も特に見当たりませんでした。むしろ、弁護士法人を利用することによる節税メリット*5を考慮すれば、収支はプラスともいえました。

 そして、単独経営に戻ったことで、私自身、一段と肚が据わりました。共同経営をしていた頃は、内外に対する経営者としての責任を、心のどこかでパートナー弁護士と分担しようと考えていました。また、多少とも大きな案件や顧問先に相対するとき、複数弁護士で経営していることを頼みにしていたところがありました。しかし、そのような逃げ場がなくなったことで、経営者あるいは弁護士としての覚悟が定まりました

 

第5 中規模単独経営のその先へ

  さて、まとめると、私は当初「小規模単独経営」というべき体制で独立し、その後、「経費共同型経営」を開始しました。しかし、約3年間の経験を経て、再び単独経営に戻りました。当初よりやや規模の大きくなった現在の体制は、「中規模単独経営」とでも呼ぶべき体制といえます。

 これを図式化すると下記のとおりです。

 

    小規模単独経営

       ↓

    経費共同型経営

       ↓

    中規模単独経営

       ↓

                     ???

 

 では、中規模単独経営の次に来るべき体制とは果たしてどのようなものでしょうか。

 

 可能性①:大規模単独経営

 一つの可能性は、親弁一人の下に複数のスタッフ(勤務弁護士・事務職員)が集う「大規模単独経営」と呼ぶべき体制です。この体制は、親弁一人が大量の案件を取ってきて、その他のスタッフはこれを処理し、あるいはマネジメントすることを基本としています。近年は、広告によって大量の案件を受任することが可能となったため、若い弁護士の中にも大規模単独経営を実現している先生が多く現れています。

 他方で、大規模単独経営はあらゆる機会とリスクが親弁一人に依存する体制のため、健康上の理由等で親弁が仕事を取ってくることができなくなった場合には崩壊の危機にさらされることとなります。また、仮に親弁に健康上の不安がなかったとしても、長期にわたって大量の案件を取り続けるというのは、超人的な能力や潤沢な資金力を要し、不安定な体制ともいえると思います。

 そのため、先進的な事務所の多くは、大規模単独経営を経て(あるいは経ずして)、次に述べる「収益共同型経営」に至る可能性が高いと考えています。

 

 可能性②:収益共同型経営

 収益共同型経営とは、複数のパートナー弁護士が、一定の利益分配ルールの下、会計を同じくして事務所を共同経営する体制だと理解しています。そして、私自身のマネジメントスタイルに照らすと、目指す法律事務所像としては、そのような収益共同型経営を理想と考えています。

 では、収益共同型経営を実現するためには、どのような条件を満たす必要があるのでしょうか。こればかりは経験がないため、仮説(と書籍による知識)によるほかありませんが、以下の3点が重要になると考えています*6

 まず第1に、経営理念を確立するとともに、パートナー弁護士との間で理念を共有することです。そして、それを実現する有効な方法の一つは、恐らく、自ら育成した勤務弁護士の中からパートナーを選ぶことです。

 そして第2に、全てのパートナーが合意する利益分配ルールを確立することです。

 最後に、(第2の点と矛盾するようですが)パートナー間で多少不公平が生じたとしても、互いにそれを許容できる関係性(Relationship)を築くことです。

 

 もっとも、上記は仮説に過ぎませんので、収益共同型経営の経験のある先生のご意見をお伺いしたいところです。何かお気付きの点がありましたら、コメント欄等でご指摘いただけたら幸いです。

 

 第6 終わりに

 これまで、いわゆる地方の街弁の中には、前述の「中規模単独経営」または「経費共同型経営」の段階で弁護士としての生涯を終える先生も多かったように感じます。しかし、日本の津々浦々で弁護士人口が増え、競争が増すとともに、顧客からの選好が深まっていくことによって、地方でも「大規模単独経営」または「収益共同型経営」の事務所が増え、今後はそうした事務所がより多くの顧客を獲得していくものと予想されます。

 私は、そのような未来にあって選ばれる法律事務所を作りたいと思っています。

 

 もしそのような未来像を共有し、一緒に働いてくれる方がいましたら、是非一度事務所を見学に来て下さい。弁護士業界の未来について語り合いましょう。

 

 若手弁護士の読者が今後の独立・経営を考えるにあたり、本記事が何らかのお役に立てば望外の喜びです。 

*1:http://odenya2.hatenadiary.jp/entry/2017/08/12/%E8%8B%A5%E6%89%8B%E5%BC%81%E8%AD%B7%E5%A3%AB%E3%81%AE%E7%8B%AC%E7%AB%8B%E3%83%BB%E7%B5%8C%E5%96%B6%E4%BD%93%E9%A8%93%E8%A8%98

*2:毎月の経費は、広告費を除けば、弁護士会費を含めても月15万円弱でした。

*3:当時のオフィス面積は4坪に満たないものでした。

*4:もっとも、これからの弁護士業界では、「強い組織」か「強い個人」が生き残ると言われており、個人としての(圧倒的な?)強みを持つ弁護士にとって組織の強弱はあまり影響がないとも考えられます。

*5:弁護士法人の設立とそのメリットについては、別稿で述べる予定です。

*6:この点で、長島安治編『日本のローファームの誕生と発展―わが国経済の復興・成長を支えたビジネス弁護士たちの証言』は多くの示唆を与えてくれるといえます。

https://www.amazon.co.jp/dp/4785719370/ref=cm_sw_r_tw_dp_U_x_iJ6ADb4QNYXPW

若手弁護士の独立・経営体験記

第1 はじめに

 随分久しぶりのブログ更新となりました。

 独立開業してからの出来事をいつか記事にしたいと考えてきましたが、昨年以来、仕事と事務所経営に忙殺され、ブログの更新ができずにいました。しかし、最近になって少し時間的な余裕ができるとともに、過去の出来事を客観的に振り返るだけの精神的な余裕ができたことから、今回、記事として公開することにしました。

 本記事が、主にこれから独立する後輩の弁護士の役に立てば幸いです。


第2 自己紹介 

 まず、私のブログを初めて読む人のために、自己紹介を兼ねて、これまでの経歴を説明しておこうと思います。

 私は、司法修習66期、現在4年目の弁護士です。千葉県において司法修習を過ごし、そのまま千葉市中央区の法律事務所(私が入所した当時は弁護士6名。)において勤務を開始しました。いわゆるイソ弁(勤務弁護士)としてのスタートでした。

 私は、元々、将来は独立して自分の事務所を持ちたいと思っていました。司法修習生時代の就職活動では非常に苦労しましたが*1、縁あって前記事務所に採用していただきました。その事務所の所長は、「勤務弁護士は3年で独立させる」という方針でこれまで多くの弁護士を育ててきており、私は、同事務所において弁護士としての実力を養い、ゆくゆくは独立することを目指して弁護士としてのキャリアをスタートすることになりました。

 しかし、勤務開始から1年半が経とうとしていた頃、所長が急病に倒れました。それ以降、所長は事務所に出られなくなり、事務所の体制は、数期上の先輩弁護士主導の体制へと大きく転換しました。

 前記のとおり3年で独立することを目標にしていた私は、その当時、「成長すること」を主たるモチベーションとして仕事をしていました。ところが、ロールモデルと考えていた所長が倒れたことによって、このまま事務所に居続ける意味がわからなくなりました。その結果、事務所に残るか、成長できる他事務所に移るか、それとも予定を前倒しして独立するかという選択肢に直面することとなりました。

 そして、様々な出来事があった後、結局、私は、弁護士2年目の終わりに独立することとなりました。


第3 「あらた法律事務所」の設立

 2015年11月21日、私は前事務所を独立して、「あらた法律事務所」を設立しました。

 資金もなく、固定客もいない状態からの独立だったので、賃料月額6万円、面積4坪弱のレンタルオフィスからのスタートでした*2。当然、事務職員など雇うことはできず、正本・副本等の作成から裁判所・郵便局への外回りまで、事務仕事は全て自分でこなしていました。当初は、外出時の電話も全て携帯電話に転送しており、一人で何人分もの仕事をしている感覚でした。

 もっとも、経費はひたすら安かったので(広告費を除けば、弁護士会費を含めて月15万円弱)、これはこれでユートピアでした。地方(東京23区以外)の法律事務所だと、いわゆるリーガルサービス(弁護士会や法テラスが配点する法律相談、国選弁護、当番弁護等)の配点がまだ豊富にあり、その配点(譲り受けを含む。)だけで一定程度の売上を確保することができました。また、その年の12月からは弁護士ドットコム*3への掲載を始めたところ、同サイトからは毎日のように電話問合せがあり、月に4~5件のペースで新件受任があったため(ただし、2015年~2016年当時)、所得(売上-経費)という点ではかなり安定していました。

 しかし、受任する事件を全て自分一人で処理するという体制は、次第に息切れを起こすようになりました。また、新しい法律事務所を作りたい、業務改革を先導していきたいという想いを込めて「あらた」法律事務所という名称を付けたにもかかわらず、現状の極めて非効率で発展性のない体制には大きなフラストレーションを感じるようになりました。それに、リーガルサービスやポータルサイトによるスポット頼みの経営では、いつか限界が来ることが目に見えていました。

 そこで、ほどなくして、同じような思いを抱いていた同期の弁護士とともに、共同事務所を設立することとなります。

 

 なお、よほど事件の多い弁護士でない限り、単独で事務局を雇用するのはオーバースペックと考えます。むしろ、ITの活用等によって事件処理事態を省力化したり、必要に応じて電話秘書等を活用することによって、経費を抑えたほうことが経営の安定につながるのではないでしょうか。
 ITの活用に関し、電子内容証明郵便の利用はマストと考えます。また、依頼者との連絡を極力電子メールにするとともに、窓付き封筒を活用することによって宛名書き等雑務を省きます。さらに、シュレッダー処理をやめ、機密文書溶解処理サービスを活用することによって時間の節約を図ることができます*4

 電話秘書のクオリティは、半端な事務職員より優秀かもしれません。月額1万円程度から利用でき、応答した内容は電子メールで即座に連絡してくれるので、留守の際などは大変重宝します*5


第4 共同事務所の設立準備

 さて、事務所を共同設立することとなる佐藤弁護士とは、司法修習の同期の間柄でした。彼もまた、私と同時期に千葉市中央区で独立開業し、それなりの見通しを持ちながらも、やはり私と同じような閉塞感を抱いていました。独立後、彼とは、千葉そごうのフードコートで週に数回、ランチミーティングと称して独立経営の孤独を分かち合っていましたが、ふとしたきっかけで私が共同経営を打診したところ、彼が応じてくれたのでした。

 そこから先は、とんとん拍子に話が進むこととなります。

 まず、新事務所を設立するのであれば事務職員が必要ということになり、求人を行うこととなりました。リーガルフロンティア21という法務専門の人材会社*6を利用したりもしましたが、結局、千葉県弁護士会に据え置かれていた履歴書を見て、現在の事務職員を採用することになりました。手前味噌ながら、極めて優秀な人材であり、たまたまこちらの条件と彼女の条件が合致したために幸運にも採用に至りました。なお、実際の加入は、新事務所設立の直前と決まりました。

 次に、新事務所の設立のため、オフィスを賃貸することになりました。千葉駅近辺のオフィス賃料の相場は坪単価1万円であり、将来的な拡大も見据えて20坪程度のオフィスを中心に当たりました。元々、私も佐藤も、顧客の利便性から駅チカにこだわっており、いくつかの候補の中から外観やフリーレント等の条件によって現在のオフィスを選びました。

 最も大変だったのは、内装工事とオフィス什器の選定です。

 まず、私達は内装工事・オフィス什器ともに、ほとんどオフィスコムという会社に一括して発注しました*7。理由は明快で、どこよりも安く、かつ、どこよりも融通が利いたからです。

 次に、法律事務所にとって最も重要となる什器は複合機ですが、私達は、多くの事務所で使われているレーザー式複合機ではなく、あえてビジネスインクジェット複合機を採用しました*8。理由は、安価で購入が可能であり、ランニングコストもレーザーよりはるかに安かったからです。

 なお、ファックスはインターネットファックスを採用しました。理由は、これもまた安かったからです*9

 電話はNTT東日本のひかり電話を採用しました*10。なお、当初はいわゆる光コラボの会社にしようと思っていたのですが、申込みから2か月以上経っても開通工事日が一向に決まらず、開業日に間に合わない事態になったため、急遽本家NTTに切り替えた次第です。光コラボを検討されている方は、くれぐれもご注意下さい。

 最後に、事務所ホームページは、ワードプレスというウェブサイト制作ソフトを使用して自作しました。費用は、専用テーマの購入に要した1万数千円のみです*11

 

 このようにして、工夫に工夫を重ねた結果、事務所設立費用は260万円程度(オフィス敷金、内装工事、オフィス什器等)に抑えることができました。これを2人で折半し、一人130万円程度です。多くの事務所が設立に300万円~500万円程度を要していることを考えると、これはかなりの節約になったと思っています。

 

 その他、TIPSを書き残しておきます。

 所内の意思疎通には、チャットワークというビジネスチャットサービスを利用しています*12

 メール、スケジューラー等は、Googleの提供するG Suiteを利用しています*13。普段から使用しているGmail、Googleカレンダーと同じ要領で操作できるため、極めて扱いやすく、また高機能です。

 独自ドメイン(ウェブサイト、メールアドレス等の@以下の表記)は、お名前.comというサービスで取得しました*14

 事務職員を雇用する場合、勤怠管理及び給与計算が必要となります。当事務所は、Clouzaというクラウドサービスで勤怠管理を行い*15、そのデータを人事労務freeeというサービスにインポートして給与計算を自動で行っています*16

 また、法定の作成義務を負うのは従業員10人以上の企業ですが、労務管理にあたっては就業規則を作成しておくことが望ましいです。当事務所は、市販の書籍に添付されているひな形をベースとして就業規則を作成しました*17

 挨拶状等を送る際の住所録は、筆まめクラウド住所録というサービスを利用しています*18

 経理はやよいの青色申告オンラインというサービスを利用しています*19

 その他、事務所ロゴや写真等は、ランサーズというクラウドソーシングサービスで発注しています*20。このうち印刷が必要なものについては、ネット印刷のプリントパックに発注しています*21

 経営、特にマーケティングのノウハウについては、2か月に1回、船井総合研究所の法律事務所経営研究会(2017年からは企業法務研究会)に出席して、情報収集をしています*22

 なお、事務所設立資金は全額自己資金で賄う必要はなく、適宜借入れを利用して全く問題ないと思います*23


第5 「新久総合法律事務所」の設立・経営

 さて、そのようにして、2016年4月27日に新久(シンク)総合法律事務所を設立しました。そして、5月23日に事務所開き(開所祝い)を実施しました。

 この事務所開きですが、可能な限り実施したほうが良いと思います。同業者を中心として周囲の方々から祝っていただくことができ、関係を深めるきっかけとなります。また、設立当初にお祝い金やお祝いの品をいただけることは本当に助かります。私達も様々な人にアドバイスをいただきながら事務所開きを開催し、たくさんの方からお祝い金・お祝いの品をいただきました*24。事務所開きに当たって注意することは、内祝いをしっかり用意することお寿司・ピザ・スナック菓子等を中心として料理・飲み物は十分な量を用意すること開催日は弁護士会の委員会・研修等に重ならないようにすること当日は知人に手伝いを頼むなどして人手不足にならないようにすること等でしょうか。

 

 事務所を設立した後も、半年間程度は日常的な経営の雑務に追われていた印象です。2017年に入り、とりわけ畠田弁護士(彼も司法修習同期の間柄です。)が加入してから、随分経営が楽になったように感じています(経費分担的にも)。

 当事務所は、地域の法人・個人事業主に対する顧問弁護士業務の拡大を主たる経営方針とし、1年余りで約30社にまで顧問先企業数を拡げてきました。そのようなマーケティングの過程等については、別記事においてお伝えしたいと思います。


第6 終わりに

 以上、取り留めなく書いてきましたが、曲がりなりにも順調に事務所を経営してこられたのは、いくつかの理由によるものではないかと思っています。

 まず、これから独立開業するのであれば、可能な限り複数弁護士による共同経営を選択すべきと考えます。経費負担を分散することができる上、規模感を印象付けることは顧客開拓においても極めて有利だからです。

 次に、弁護士だけでなく、事務職員の能力・才能の活用はもはやマストといえます。当事務所が存続してこられたのは、偏に優秀な事務職員たちのお陰であり、これからも彼女たちの才能を発揮できる体制・環境づくりに取り組んでいきたいと思っています。

 そして最後に、何よりも実感しているのは、「経営」とは極めてタフな作業であり、経営者は覚悟を持ってその作業に取り組まなければならないということです。現事務所を設立してからというもの、本記事に書ききれないほどたくさんの経営課題に直面してきました。しかし、前二者にも通ずるのですが、共同経営を選択し、かつ、事務職員が積極的に経営に参画してくれたからこそ、そのようなタフな経営課題を乗り越えてくることができたのだと思います。

 

 当事務所は、多様な専門性を有したパートナー弁護士を順次増員していくことで発展を目指しています。人数が増えることでますます経営は複雑性を増していくと思われますが、設立当初から培ってきた「スタッフ対等」の風土を大切にして、これからも課題に向き合っていきたいと思います。

 

 



*1:司法修習生の就職活動考 ~公募に頼らない就職活動~ http://odenya2.hatenadiary.jp/entry/2014/02/01/133541

*2:http://capital-bc.jp/

*3:https://www.bengo4.com/lawyer/

*4:https://www.otsuka-shokai.co.jp/products/ods/dispose/solution/meltybox.html

*5:http://www.central-eye.co.jp/

*6:http://www.lifr21.com/

*7:https://www.office-com.jp/

*8:http://www.epson.jp/products/bizprinter/pxm7050f/

*9:https://www.efax.co.jp/internet-fax-pricing/fax-pricing-compare/

*10:http://kakaku.com/bb/denwa/

*11:http://design-plus1.com/tcd-w/

*12:http://www.chatwork.com/ja/

*13:https://gsuite.google.co.jp/intl/ja/features/

*14:https://www.onamae.com/

*15:https://clouza.jp/

*16:https://www.freee.co.jp/hr/payroll-processing

*17:https://www.amazon.co.jp/%E5%B0%B1%E6%A5%AD%E8%A6%8F%E5%89%87-%E8%AB%B8%E8%A6%8F%E7%A8%8B%E4%BD%9C%E6%88%90%E3%83%9E%E3%83%8B%E3%83%A5%E3%82%A2%E3%83%AB-6%E8%A8%82%E7%89%88-%E5%B2%A9%E5%B4%8E-%E4%BB%81%E5%BC%A5/dp/4539724479/ref=sr_1_3?ie=UTF8&qid=1502450326&sr=8-3&keywords=%E5%B0%B1%E6%A5%AD%E8%A6%8F%E5%89%87

*18:https://cloud.fudemame.jp/address

*19:http://www.yayoi-kk.co.jp/products/aoiro_ol/index.html

*20:http://www.lancers.jp/

*21:http://www.printpac.co.jp/

*22:http://www.funaisoken.co.jp/site/study/mfts_1182405822.html

http://www.funaisoken.co.jp/site/study/014599.html

*23:https://www.jfc.go.jp/n/finance/search/02_zyoseikigyouka_m.html

*24:なお、知人のアドバイスに従って、「ほしいものリスト」を作成・公開したところ、多くの皆様から品物を贈っていただくことができました。https://www.amazon.co.jp/gp/registry/wishlist/1GMIPH8DENNXO/ref=cm_wl_list_o_2?reveal=all&view=null

司法試験関係者必読の一冊 『37の法律フレームワーク -誰も教えてくれない事例問題の解法-』

第1 はじめに

 同期の井垣孝之弁護士が書いた『37の法律フレームワーク -誰も教えてくれない事例問題の解法-』を読みました。

 結論から言うと、紛れも無い名著です。今年5月に受験を控えている方も含め、司法試験受験生であれば必ず目を通しておくべき一冊ではないでしょうか。

 井垣氏の「フレームワーク」論についてはかねてTwitter等を通じて聞き及んでいましたが、本書を読んで初めてその体系的な思索内容に触れました。そこで今回は、本書についてささやかながら書評を書いてみたいと思います。


第2 「基本」=「三大法律フレームワーク」

 本書の功績は、司法試験合格の必要条件とされる「基本」とは何かを徹底的に論じ、かつ、それを「フレームワーク」という用語を導入して共通言語化した点にあると考えます。

 ここでいう「基本」とは、「法的三段論法のフレームワーク」「利益衡量のフレームワーク」「原則-例外のフレームワーク」(以上を合わせて「三大法律フレームワーク」といいます。)のことであり、それ自体、目新しいものではありません。

 しかし、井垣氏が指摘するとおり、①法的三段論法をはじめとする基本的な法律フレームワークは、多くの学生の間で誤って理解されています。また、②かかる基本的なフレームワークの習得については、現在のところ個人のセンスと運任せとなっており、体系的な教育方法が確立していない点に問題があります

 以上の2点について、本書は、これまで暗黙知とされていた実務家の法的思考(ex.法的三段論法)を言語化(=形式知化)し、学生が正確に理解することを助けるとともに、そのような法的思考に「フレームワーク」という汎用語を用いることによって体系的な法学教育の基礎を築こうとしています

 その点において、本書は、司法試験受験生向けのノウハウ本であると同時に、それを超えて、わが国の「法学教育の方法論のモデルを提示する」という極めて野心的な目的を有しています


第3 教育書としての秀逸さ

 そして、上記の目的に鑑みて本書が素晴らしいのは、教育書としての普遍性を持ち得ているという点です。

 それはまず、本書の構成によるものです。本書を手に取る学生の多くは、未だ法律フレームワークを身に付けていない者でしょう。そのような読者に対し、本書は、具体例をふんだんに使用することによって、法律フレームワークを身に付けたときに見える世界を擬似体験させます。これによって、学生は法律フレームワークの存在を実感し、その世界に少しずつ足を踏み入れることができます

 他方で、本書は、法理学といった基礎法学の潮流をしっかり押さえ、大学教授をはじめとする教育者の批評に耐える内容となっています

 こうして、学生と教育者は、法律フレームワークの世界で出会うこととなるのです。


第4 終わりに

 法律フレームワークの詳細な内容については、実際に本書を手に取ってご自身の目で確かめていただきたいと思います。しかし、確実に言えることは、本書で論じられている法律フレームワークは、司法試験合格の必要条件であるとともに、日頃の法律相談などで用いる法曹実務家の思考方法そのものだということです。その意味で、本書が理論と実務をつなぐことを使命とする法科大学院教育の新たなスタンダードとなることを願ってやみません。

 なお、本書は法律フレームワークの世界への入口に過ぎず、本書を読むことによって直ちに法律フレームワークの"中身"が身に付くものではありませんあくまでそれは、個々の学生が学習を通じて身に付けなければならないものだからです

 もっとも、ひとたび法律フレームワークという着想を得ることによって、見える世界が変わってくることも確かです。その意味では、井垣氏が本書を通じて本当に伝えたかったことは、以下の記述に集約されるのではないでしょうか。

 

 法律フレームワークを使いこなせるようになるためには、特に三大フレームワークについては常に「あのフレームワークは使えないか?」という視点で講義を受けたり、基本書を読んだり、問題を解いたりすることが重要です。そうすると、学ぶ姿勢が自然と受動から能動へと変化しますから、脳の働き方ががらっと変わって記憶の定着率も高まります。本書の中の具体例から法律フレームワークが効く場面を抽出し、他の法律や、他の論点、さらには法律と関係のない場面でも使えないかという観点で、世界を眺めてみてください。

(本書p.401)


 忙しい方には、総論部分に相当する第1~5章及び第14章だけでも読むことをお勧めします。

 この国の法学教育を変えるかもしれない法律フレームワークの世界を、本書を通じて是非体験してみませんか?

 

 

ご注文・書籍詳細は以下のバナーから:

司法試験ブログまとめ【2016年1月27日更新】

 玉石混淆の司法試験ブログの中で非常に参考になるものを合格年度ごとにまとめてみました。「これは」と思った記事とそのコメント、大体の優先度(☆~☆☆☆)も付けています。

 

 

・平成27年度

 

「司法試験関係記事まとめ」 / "ちゅうばふきの休日!新つれづれ日記"
優先度:☆
各科目の勉強法等について網羅的にまとめておられます。

http://tyuubafuki.blog.jp/archives/cat_10051026.html

 

 

・平成26年度

 

「法的三段論法について」 / "太郎の司法試験ブログ"
優先度:☆☆
法的三段論法について、深いところまで理解されています。いわゆる「答案の書き方」がわからない方には一読を勧めます。
http://ameblo.jp/sihouoishii/entry-11929840292.html

 

「目的と勉強方法(勉強内容を含む)」/ "おーらせらぴー"
優先度:☆
「目的」の把握と「自己分析」が大切という、当たり前だけれど多くの方が理解していない点について丁寧に説明されています。
http://ouraroom.blog.jp/archives/1009078281.html

 

 

・平成25年度

 

「論述の意識Ⅰ」/ "エスケイのブログ"

優先度:☆☆

二桁合格者のブログ。どのような答案が採点者に評価されるか、よく考えていらっしゃいます。王道と言うべきスタイルです。

http://ameblo.jp/potetocat/entry-11618861472.html

 

「【合格への道】採点実感と上位合格者答案集」/ "ギアの新司法試験一発上位合格するまでの記録"

優先度:☆

簡潔ですが、過去問分析を答案に反映させていった過程がうっすら見えてきます。

http://ameblo.jp/sieger-w/entry-11615625674.html

 

 

・平成24年度

 

「新司法試験・法科大学院入試の択一(短答)勉強方法」/ "凡人だって、新司法試験に合格したい!"

優先度:☆☆

短答の勉強方法についてはこれまで読んだ中で一番ためになりました。仮に再チャレンジすることになっていたら、この勉強法で行こうと思っていました。

http://blogs.yahoo.co.jp/delidelidesu/38382329.html (※リンク無効)

 

「H24(新)司法試験 再現答案 」/ "素LOWライフ"

優先度:☆

上位合格者による再現率の高い再現答案集

http://bufferlow.blog.fc2.com/blog-category-4.html

 

 

・平成23年度

 

「平成23年新司法試験憲法」/ "間違いだらけの憲法答案~よくわからないをスッキリに~"

優先度:☆

憲法の再現構成です。表現の自由v.s.プライバシー権を法令違憲と適用違憲で書き分ける部分が素晴らしいです。

http://ameblo.jp/lawschool-life/entry-10893618115.html

 

「H23新試論文答案の再現」/ "xc_ls→J"

優先度:☆☆

本年度総合3位の方の再現答案です。時間のない方は、行政法だけでも読まれることをお勧めします。

http://blog.goo.ne.jp/xc_ls/c/f1021b9c6edb928f98010f0aadb0f411

 

「択一の勉強法~総論~」/"just do it"

優先度:☆☆

一桁合格の方のブログ。王道一直線です。

http://kbkb2.seesaa.net/article/214707841.html

 

 

・平成22年度

 

「再チャレンジ成功までの記録(1.不合格に至るまで)」/ "新司法試験再チャレンジ日記"

優先度:☆☆☆

敗因を徹底的に分析されて、翌年素晴らしい結果を残された方のブログです。

http://lawnin.blog83.fc2.com/blog-entry-222.html

 

「日常的学習その3」/ "planetes"

優先度:☆

ロースクール1、2年生にお勧めします。

http://roguyomi.blog33.fc2.com/blog-entry-324.html

 

 

・平成21年度

 

「試験勉強戦略」/ "淡青あちーばー lightblue-achiever"

優先度:☆☆

再現答案の分析方法がとても参考になります。

http://lightblue-achiever.cocolog-nifty.com/blog/2011/03/post-7033.html (※リンク無効)

 

「[司法試験]受験の記録・論文編・総論」/ "Out To Lunch!"

優先度:☆☆

「合格答案」と「優秀答案」を分けた上で、リスクなく「合格するために」は「優秀答案」を目指すべきとしています。あてはめの仕方についての説明が秀逸です。

http://d.hatena.ne.jp/fjknch/20090927/1254041370

 

「答案作成のプロセス」/ "masoブロ"

優先度:☆☆

この記事を読むと、極めて基本的な事項が合否を分けていることがわかると思います。「論証を覚える」のは注意です。

http://hayamaso.blog91.fc2.com/blog-entry-128.html

 

 

・平成20年度

 

「論文試験の戦略2」/ "新・単なる勉強記録"

優先度:☆☆☆

具体的に考えること。それが何よりもまず合格の条件だと。そうしたメッセージを感じます。

http://yaruze08.seesaa.net/article/107991739.html

 

 

・平成19年度

 

「論文力(4)」/ "Footprints"

優先度:☆☆

一連の記事で、論文力に関する緻密な分析をされています。

http://d.hatena.ne.jp/redips/20071015/1192415036

 

 

・平成18年度

 

「新司法試験・新たなる難現象。」/"Absolute Blue"

優先度:☆☆

合格者ブログの伝統は、このブログから始まったようです。

http://blog.livedoor.jp/eiji_inose/archives/51648897.html

 

 

・番外編

 

「解釈と評価の構造・必要性」/ "司法試験:勝利のアルゴリズム"

優先度:☆☆

法律答案の構造について、非常に論理的に説明されています。

http://ameblo.jp/4-algo-rhythm/entry-11621018978.html

 

「十年後の受験生へ」/ "司法試験情報局(LAW-WAVE)"

優先度:☆

「勉強の目的」という、忘れてはならないが、何故か多くの受験生が見失ってしまうものについて、口酸っぱく注意喚起をしています。

http://ameblo.jp/getwinintest/entry-11419781704.html

【改訂版】新社会人のためのブックリスト25選 ~新人弁護士編~

 お久しぶりです。

 さて、Twitterで報告したとおり、このたび前事務所から独立して、自身の弁護士事務所を開所致しました

  

 そのこともあって、今年は、私の仕事人生にとって非常に大きな節目の年となりました。

 そこで、今回の記事では、この2年間を通して私を支えてくれた数々の本のうち、特に新社会人にオススメしたい25冊を紹介したいと思います。

 

 主に新人弁護士の方を対象としていますが、それに限る趣旨ではないため、法律書籍や弁護士実務の書籍は除外しています。

 

 それでは、ご覧下さい。

 

 

1 ロジカルシンキング

 

考える技術・書く技術―問題解決力を伸ばすピラミッド原則

考える技術・書く技術―問題解決力を伸ばすピラミッド原則

 

 

 

ロジカル・シンキング―論理的な思考と構成のスキル (Best solution)

ロジカル・シンキング―論理的な思考と構成のスキル (Best solution)

 

 

 

新版 問題解決プロフェッショナル―思考と技術

新版 問題解決プロフェッショナル―思考と技術

 

 

 

 

2 人間関係・コミュニケーション

 

人を動かす 新装版

人を動かす 新装版

 

 

 

自分の小さな「箱」から脱出する方法

自分の小さな「箱」から脱出する方法

  • 作者: アービンジャーインスティチュート,金森重樹,冨永星
  • 出版社/メーカー: 大和書房
  • 発売日: 2006/10/19
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
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営業の魔法―この魔法を手にした者は必ず成功する

営業の魔法―この魔法を手にした者は必ず成功する

 

 

 

プロカウンセラーの聞く技術

プロカウンセラーの聞く技術

 

 

 

ハーバード流交渉術 (知的生きかた文庫)

ハーバード流交渉術 (知的生きかた文庫)

 

 

 

 

 

この人と結婚していいの? (新潮文庫)

この人と結婚していいの? (新潮文庫)

 

 

 

 

3 時間管理

 

はじめてのGTD ストレスフリーの整理術

はじめてのGTD ストレスフリーの整理術

 

 

 

TQ-心の安らぎを得る究極のタイムマネジメント (ソフトバンク文庫)

TQ-心の安らぎを得る究極のタイムマネジメント (ソフトバンク文庫)

 

 

 

 

4 キャリア形成

 

 

 

仕事は楽しいかね?

仕事は楽しいかね?

 

 

 

抜擢される人の人脈力  早回しで成長する人のセオリー

抜擢される人の人脈力 早回しで成長する人のセオリー

 

 

 

 

5 自尊心・モチベーション

 

嫌われる勇気―――自己啓発の源流「アドラー」の教え

嫌われる勇気―――自己啓発の源流「アドラー」の教え

 

 

  

 

それでも人生にイエスと言う

それでも人生にイエスと言う

 

 

 

 

6 マネジメント

  

最高のリーダー、マネジャーがいつも考えているたったひとつのこと

最高のリーダー、マネジャーがいつも考えているたったひとつのこと

 

 

   

ザ・ビジョン 進むべき道は見えているか

ザ・ビジョン 進むべき道は見えているか

 

 

 

新1分間マネジャー――部下を成長させる3つの秘訣

新1分間マネジャー――部下を成長させる3つの秘訣

 

 

 

ザ・コーチ - 最高の自分に出会える『目標の達人ノート』

ザ・コーチ - 最高の自分に出会える『目標の達人ノート』

 

 

 

はじめの一歩を踏み出そう―成功する人たちの起業術

はじめの一歩を踏み出そう―成功する人たちの起業術

 

 

 

リーダーの人間力 人徳を備えるための6つの資質

リーダーの人間力 人徳を備えるための6つの資質

 

 

  

  

7 マーケティング

 

〔エッセンシャル版〕マイケル・ポーターの競争戦略

〔エッセンシャル版〕マイケル・ポーターの競争戦略

 

 

 

 

8 マネープラン

 

 

 

 

 ※本記事は、昨年書いた下記記事の改訂版です。

 

 

弁護士の自炊(※Cookingじゃないほう)

第1 はじめに 

f:id:odenya2:20150525043505j:plain

 

 Amazonの電子書籍リーダー「Kindle Voyage」を買いました。

 これに伴い、雑誌・書籍の自炊(自力による私的利用のための電子書籍化)が本格化してきましたので、ここで一弁護士の自炊法について説明してみようと思います。

 

第2 定期購読している雑誌・書籍をPDFで読む

 自炊の目的は、定期購読する雑誌や書籍をPDF化して読むことです。

 以下、順次説明していきます。

 

1 雑誌・書籍

 まず、現在定期購読している雑誌・書籍は以下のとおりです。

 

(1) 判例時報

 法律家にとっては言わずと知れた判例雑誌です。

 最高裁判例はもちろん、重要な下級審判例が多数掲載されるので、実務感覚を磨くのに役立ちます。

 

(2) 判例タイムズ

 こちらも法律家にとっては言わずと知れた判例雑誌です。

 判例時報と同様に最高裁判例と重要な下級審判例が掲載されるのはもちろんですが、現役裁判官などが寄稿する特集記事も非常に読み応えがあります。

 

(3) 現代法律実務の諸問題 

日弁連研修叢書 現代法律実務の諸問題<平成25年度研修版>

日弁連研修叢書 現代法律実務の諸問題<平成25年度研修版>

 

 

 日弁連が毎年行っている「夏期特別研修」の講演録をまとめたものです。毎年7月頃に、前年度の分が発刊されます。

 主に各分野で実績のある弁護士が講師を務めるため、弁護士実務のノウハウを効率良く学ぶことができます。

 

2 PDF化までのプロセス

 さて、以上に述べた雑誌・書籍をPDF化していくわけですが、その方法について説明していきます。

 

(1) 裁断機 

DURODEX 自炊裁断機 ブラック 200DX

DURODEX 自炊裁断機 ブラック 200DX

 

 

 私が使用しているのは、デューロデックス社が製造する裁断機(国産)です。

 約3万9000円とやや値段は張りますが、長期使用することを考えれば、安価で問題のある(らしい)外国製を購入するよりも良いと思います。

 約200枚まで一度に裁断できます。

 

(2) スキャナー

 スキャナーは、「ScanSnap Evernote Edition」です。

 Evernoteとの連携に特化しており、生成したPDFファイルを自動でEvernoteに取り込んでくれます。

 

(3) Evernote

 したがって、生成されたPDFファイルは、全て一度Evernoteに保存されます。このことが重要です。

 なぜなら、Evernoteに保存されたPDFファイルは、EvernoteのOCR(文字認識)機能によって、キーワード検索が可能になるからです。 したがって、号数・頁数を忘れてしまったとしても、後に検索することが可能です。

 

(4) Kindle

f:id:odenya2:20150525042628j:plain

 

 そして、EvernoteからダウンロードしたPDFファイルをKindleに移します。

 Kindleの電子ペーパーは非常に高品質です。紙媒体で読む場合とほとんど感覚が変わりません。

 サイズはやや小さくなりますが、読むのに苦を感じるほどではありません。

 

第3 私的データベースの中核になる

  雑誌・書籍を定期購読するメリットは、実務の最前線の情報が入ってくることにああります。

 現在、どのような法律問題が存在するのか、そして、その法律問題を解決するに当たって参照される過去の判例や経験則は何かを学ぶことができます。実務における知識(理論知・実践知)の体系を学ぶことができるのです。

 このような知識の体系は、私的データベースを構築していくに当たって非常に役立つと考えています。

 

第4 終わりに

 以上、私の自炊法を紹介しました。

 自炊に興味がある、始めてみたいけど何から取り掛かればいいかわからないなど、聞きたいことがございましたら、本ブログのコメント欄やTwitterでご質問下さい。

弁護士の整理法 ~メール処理編~

第1 はじめに

 今回はメール処理に関する記事です。

 弁護士業にも既にIT化の波が押し寄せていて、顧客とのやり取りや弁護士会内部の活動の多くがメールによって行われるようになっています。

 そのため、メール処理の方法論を確立することは、業務効率化において極めて重要であり、私自身、この一年間を通して自分なりの方法論を磨いてきました。

 今回は、その方法論について書いてみたいと思います。


第2 Gmailに一元化

 1 Gmailこそが最適のツールである

 まず、メールソフトの中でGmailほど操作性や機能性に優れたツールを私は知りません。
 特に、Gmailの検索機能は優れており、求めている情報を瞬時に探し出すことができます。これは、日々何十通ものメールを処理する身としては大変助かります。
 そこで、独自ドメインを含む複数のメールアドレスを保有していたとしても、メールは全てGmailに一元化するのが適切であると考えます。

 

2 Gmailにメールを一元化する方法

 そこでGmailにメールを一元化する方法です。

 私は、以下に掲載する『月刊大阪弁護士会』の記事を参考に設定しました。

 

・【特集】弁護士業務に効く!Gmail徹底活用術

https://www.osakaben.or.jp/newsletter/db/pdf/2014/oba_newsletter-9.pdf

 

 

 また、以下の記事も非常に丁寧です。

 

 

 

第3 Inbox方式

 1 Inbox方式とは

 メールをGmailに一元化したら、次に、Inbox方式を実践するための準備を行う必要があります。

 「Inbox」とはいわゆる受信トレイのことですが、ここでは特に、後述する処理を行う前にメールを一時的に保管しておく受け皿のことを言います。そしてInbox方式とは、このInboxを活用して、効率の良い情報処理を行う仕組みのことを言います。

 

 2 Inboxを初期設定する

 Inbox方式では、Inboxは初期状態で空になっている必要があります。そこで、メールでいっぱいになったInboxを一度空にする必要があります。

 私は以下のリンクの記事を参考にしました。

 

 

 3 Inbox → 処理 のプロセス

 準備は整いました。いよいよメールごとに必要な処理を行っていくプロセスに移ります。

 未処理のメールは全てInboxに残しておき、以下に述べる処理を行った後にアーカイブに移動させます。

 

 (1) 一読するだけで足りるもの → 一読してアーカイブに移動

 まず、一読するだけで足りるメールです。これには、業者から届くメールマガジンや自分と直接関係のないメーリングリスト上のやり取りなどが含まれます。

 こうしたメールは、一読した後、アーカイブに移動させます。 

 

    f:id:odenya2:20150507041455p:plain

 

 

(2) 保存しておく価値があるもの → EvernoteにWebクリップ

 次に、保存する価値のあるメールは、EvernoteのWebクリッパーを利用して保存します。

 

    f:id:odenya2:20150507042448p:plain

 

 

(3) 返信の必要があるもの → 12時間以内に返信する

 そして、返信の必要があるメールは、できる限り早く返信するようにします。私の場合は、12時間以内に返信することを心掛けています。

 

 なぜ、仕事ができる人はメールの返信が早いのか? | sogilog

 

 

(4) その他

 そのほか、いつか読み返すかもしれないメールにはスターを付ける、決まった時刻に参照することが予定されているメールにはリマインダーを設定する(※後述する「Right inbox for Gmail」を利用。)といった処理をしています。

 

第4 メール送信の際の一工夫 ~送信予約~

 最後に、参考までにメール送信の際の一工夫をお伝えします。それは、送信予約機能を活用することです。

 

 

 送信予約機能を使うと、自ずと作成後にメールを読み返すため、誤字脱字やファイルの添付漏れを防止することができます。

 また、夜間を避けてメールを送信することができるため、受信者への配慮にもなります。

 

第5 終わりに

 以上、私の行っているメール処理法について述べました。

 たかがメール処理、されどメール処理。時間を測ってみると、一日のうち、それなりの時間をメール処理に費やしていることに気付きます。

 そのようなルーティーンワークを可能な限り効率化し、より本質的な作業(知的生産)に時間を割く工夫がナレッジワーカーには求められています。

 日々膨大な量のメールと格闘している方の参考になれば幸いです。

 

 

 

 

予定と記録を一致させる習慣 ~仕事能力のPDCA~

第1 はじめに

 私が仕事で心掛けている習慣として、予定と記録をできる限り一致させる、というものがあります。

 その習慣の内容、そして、そのような習慣によって何が得られるのかについて、本日は私の考えをまとめてみたいとおもいます。


第2 具体例

1 電話メモ、期日メモ、打合せメモ

 まず、「予定」と「記録」とはどういったものを言うのでしょうか。抽象的に述べていても伝わらないと思うので、具体例を挙げましょう。

 

 例えば、電話メモです。

 これは多くの方が実践していると思いますが、電話を掛ける前に、以下のように箇条書きで連絡事項、聴取事項をメモしておくと、漏れを防ぐことができます。

 

4/12  Aさん

1 ○○送付のお願い

 

2 ××で良いか確認してほしい

 

 

 こういった準備をしておくと通話時間が短くなり、双方にとってメリットです。

 

 そして、通話後には、この箇条書きのメモがそのまま記録として残ります。場合によっては、相手の回答を前記メモに書き込んでもいいと思います。

 

4/12  Aさん

1 ○○送付のお願い

 → 本日、郵送する。

2 ××で良いか確認してほしい

 → 確認して折り返し連絡する。

 

 さて、予定と記録を一致させるとは、作業前に作ったメモ(予定メモ)作業後に結果として残るメモ(記録メモ)の項目・内容を、可能な限り一致させることを言います。想定(シミュレーション)と結果を一致させると言い換えてもいいと思います。

 

 なお、電話メモと同様に、私は、裁判期日前に期日メモを依頼者との打合せ前に打合せメモを作っています。

 

2 デイリータスクリスト

 さらに、予定と記録を一致させる習慣において重要だと思うのが、デイリータスクリストです。私の場合、そのようなデイリータスクリストとして、タスクシュートというタスク管理ツールを使用しています。

 

 

 タスクシュートでは、一日の初めに全タスクをセル上に並べた上、それぞれの見積り時間を入力します。これは、言わばタスク処理の予定メモと言えます。

 そして、タスクを順次実行するたびに、実績としての開始時刻と終了時刻を入力していきます。これによってタスク処理の記録メモが出来上がります。

 

 ところで、タスクシュートでは、全タスクとその見積り時間を入力した時点で、全タスクの終了時刻、すなわち想定される帰宅時刻が明らかとなります。ところが、その後実績時間(終了時刻-開始時刻)を入力していくと、実際の帰宅時刻は想定よりも遅くなることがしばしばです。これは想定と記録のズレと言うことができます。

 そこで、見積り時間の精度を磨いていくことで、想定される帰宅時刻と実際の帰宅時刻を限りなく一致させることを目指していくことになります。


第3 予定と記録を一致させる意味

 さて、そのようにして予定と記録を一致させる意味とは何でしょうか。

 これについて、私は、少なくとも、①想定の精度を磨くことができる②記録作成の労力を省くことができる、といった意味があると考えています。

 

1 想定の精度を磨く

 予定メモを作る目的は、事前に結果の想定を行うことにあります。これによって、悪い結果が予想されるならば、方法を変えたり、対策を施すといった対処をすることができ、無用な失敗をしないで済みます。

 そして、乱暴に言ってしまえば、仕事能力の大部分は、この想定の精度に依存します。したがって、仕事能力の成長過程では、想定の精度を磨いていくことが求められます。

 この点、予定メモを作る習慣があれば、結果と照らし合わせることによって、常に自己の想定の精度を測ることができます。そして、もし想定が結果とズレていたならば、ズレの原因を分析し、次回から想定を改善することができます

 つまり、仕事能力の成長過程は、①想定を立て(Plan)、②これに沿って作業を実行し(Do)、③想定と結果を照らし合わせ(Check)、④以後の想定の改善につなげる(Act)という、一連のPDCAサイクルにあるのです。


2 記録作成の労力を省く

 上記のPDCAサイクルを回すためには、作業記録を残す必要があります。

 ところが、一から作業記録を作成するのは非常に面倒です。日報を作成する面倒さを想起すればわかると思います。

 これに対し、予定メモを作成する習慣があり、しかも予定と記録が概ね一致しているならば、事前に作った予定メモがほぼ記録メモとして機能します。記録作成の労力が大幅に削減できるのです(この点については、以下の記事を参照。)。

 

 

  

第4 終わりに

 さて、以上が私の実践している予定と記録を一致させる習慣でした。

 私もまだまだ未熟ですが、日々、想定の精度を磨こうと頑張っています。一見地味な習慣ですが、じわじわと仕事能力の向上に現れてくると思いますので、是非参考にしてみて下さい。

 

 

 

■今週の注目記事

【節約】『賢い人のシンプル節約術』リチャード・テンプラー:マインドマップ的読書感想文

 

 最近、節約と投資に関心が高まっているので、「節約」についての記事をご紹介。

 「給料から自動振替で貯蓄する」などは、貯蓄の仕組み化として非常に優れていると思います。是非、実践してみようと思います。

弁護士一年目の確定申告(青色65万円控除)をサクッと終わらせる方法

第1 はじめに

 先週、初めての確定申告を終えました。青色申告、しかも65万円控除です。

 実は昨年以来、私は、税金についてそれなりに勉強をしてきました。そのため、いざ確定申告を迎えるときには、だいぶ楽な気持ちで過ごすことができました。

 そこで今回は、初めての確定申告を終えて気付いたコツのようなものについて書いてみようと思います。

 

第2 下準備 

1 開業届出書、青色申告承認申請書の提出

 まず、事業所得の発生する新人弁護士は、管轄の税務署に「個人事業の開業届出書」を提出しなければなりません。「事業開始から1か月以内」に提出するものとされているので、できる限り速やかに提出しましょう(少し遅れても勘弁してくれます)。

 また、青色申告を目指す人は、管轄の税務署に「青色申告承認申請書」を出すことが必要です。

 こちらは、最初に青色申告をしようとする年の3月15日(提出期限が土・日曜日・祝日等に当たる場合は、これらの日の翌日)までに提出する必要があります。消印有効だそうなので、まだ出していない方は郵送で早く送ってしまいましょう。

 

参照: 江戸野郎:新人弁護士向け税金講座(その3)

 

2 会計ソフトの導入

 そして、確定申告をサクッと終わらせるために欠かせないのが、会計ソフトです。

 

 私が使っているのはコレ。「やよいの青色申告 オンライン」です。



 なんと、昨年はキャンペーンにより、年会費無料でした。

 

3 経費入力に役立つスマートフォンアプリ

 確定申告の準備で最も面倒なのが経費入力です。ところが、その経費入力を自動化するスマートフォンアプリがあります。

 「Streamed」というアプリです。



 このアプリは、スマートフォンのカメラでレシートを撮影するだけで、日付、金額、勘定科目、摘要などを自動入力してくれます

 

第3 日々の記帳 

 さて、具体的な記帳作業に入っていきましょう。

 

 1 経費の入力(Streamedで撮影するだけ!)

 経費の入力は、定期的に行うのがオススメです。入力の漏れがなくなるからです。

 私は毎日早朝の時間を利用して行っています。

 もっとも、経費入力といっても、Streamedを使ってレシートを撮影するだけなので、5分から10分で終わります

 

2 売上の入力(報酬の振込先口座は一つに!)

 次に、売上は、その都度、やよいの青色申告オンラインに入力します。

 その際注意すべきは、報酬の振込先口座を一つにしておくことです。これによって、売上を見落とすことがなくなります。

 弁護士一年目であれば、悲しいかな、そう頻繁に報酬が入金されることはありませんので、売上の入力は、月に数回程度、まとめて行えば十分です

 

3 経費のレシート等はバインダーで保管する

 なお、経費のレシート等は、当該年度の確定申告の提出期限から7年間の保管義務が課せられています

 レシート等の管理にこれといった決まりはありません。月ごとに分けて封筒やクリアファイルで入れておく程度で構いません。



 

 私はキングジムの領収書バインダーを使用しています。

 

キングジム 領収書ファイル A4 1/3  2380 ライトグレー

キングジム 領収書ファイル A4 1/3 2380 ライトグレー

 

 

 

 なお、この点誤解しがち(?)なのが、「領収書の電子保存」です。

 確かにそのような制度はあるのですが、要件が極めて煩瑣である上、Acrobat等の有料ソフトをダウンロードする必要があり、少なくとも個人事業主にとってメリットはないと思われます。



 

第4 確定申告書の作成

 1 「事業主借」、「事業主貸」を活用する

 さて、いよいよ確定申告書類の作成です。

 といっても、会計ソフトを使用するため、ガイドに沿って数字を入力したり、メニューを選択していけばよく、これまでにきちんと記帳を行っていれば決して面倒な作業ではありません。

 ただ、唯一コツ(?)を上げるとすれば、勘定科目を全て「事業主借」(経費の場合)、「事業主貸」(売上の場合)にしてしまうことです。

 細かい説明は省きますが、こうすることによって金銭の振替を行う必要がなくなり、取引の入力が圧倒的に楽になります

 ただし、このような会計処理は事業会計と家計をごちゃ混ぜにしているも同然であるため、事業規模が小さく、従業員がいない間にとどめておいたほうがいいかもしれません。



 

 2 経費の勘定科目にはこだわらない

 経費には、「研究費」、「接待交際費」といった勘定科目があります。

 しかし、結論から言うと、勘定科目にこだわる必要はありません。経費の金額が一致さえしていれば、納税額が変わることはなく、税務署側にも追及する動機がないからです。

 もっとも、特定の科目のみが突出して高いと税務署に怪しまれるそうなので、完成した損益計算書を見て、金額を平準化するようにしましょう

 この当たりの豆知識は、きたみりゅうじ『フリーランスを代表して申告と節税について教わってきました。』に網羅されています。

 

フリーランスを代表して 申告と節税について教わってきました。

フリーランスを代表して 申告と節税について教わってきました。

 

 

 

第5 e-taxを活用する

 さて、確定申告書は郵送で提出することもできますが、さらに提出を簡素化したいのであればe-taxを使うのがオススメです。

  文字数の都合上、詳しい説明は省きますが、代わりに以下の記事を紹介しておきます。



 

第6 まとめ

 正しい節税のためには、青色申告を行い、かつ、掛かった経費を漏れなく計上することが重要です。

 他方で、確定申告やそのための記帳作業に時間を取られ、本業に支障が出てしまっては本末転倒です

 そこで今回は、しっかり節税しつつ、その作業を最大限効率化する方法を紹介しました。

 この記事を読んだ新人弁護士の皆様が、来年3月に晴れやかな気持ちで確定申告を迎えられたら望外の喜びです。

 

 

 ■ 今週の注目記事



 ファーレンハイトさんの記事。

 「自分のスタイル」を持つことの大切さは、恋愛に限らず、人間全般に言えることなんだと思います。

 そういえば、ファーレンハイトさんは、昨年の「ブロガーズフェスティバル」のパネルディスカッションでもそんな話をしていました。それは「企業に求められるブロガーになるには」というテーマだったと思います。

 私ももっと自分のスタイルを開示していこうと思いました。モテたいしね。

私的データベース構想の概要

第1 はじめに

 私は、昨年12月に以下のツイートをしました。

 

 

 法令や判例などのリサーチ業務は、企業法務に就いている弁護士に限らず、町弁にとってもしばしば必要です。

 そのようなリサーチ業務に要する資料へのアクセスについて、私は、これまで個人レベルで工夫を行ってきました。Evernoteをプラットフォームにした資料の収集・管理です。

 

 ところで、その過程で、現在個人で行っているような工夫をチーム単位で行うことができれば、業務効率化を数倍に加速することができるのではないかと考えるようになりました。

 それが、以下に述べる「私的データベース構想」です。

 

 すなわち、①データベースを構成する資料を「収集」する段階、②他人が使用できる形に資料を「規格化」する段階、そして③資料をチームで「共有」する段階を循環させることによって、無限に成長していくデータベースを作ろうという構想です。

 

第2 Evernoteへの収集

 1 紙の資料をスキャン

 民間のデータベースの難点は、何よりもコンテンツが既定されていることです。そのため、日常業務に必要な資料が網羅されていない反面、必要のない資料が多数登載されていたりします。そして料金が高いのです。

 

 これに対し、私的データベースであれば、コンテンツは自由自在です。

 例えば、スキャナーがあれば、紙媒体でのみ提供されている資料をデータベースに取り込むことができます。

 

 2 WEB上の書式を収集

 また、WEB上の公開情報にも有益なものが多くあります。

 例えば、各地方裁判所が公開している申立書の書式などは、これを加工することによってそのまま業務に使用することができます。

 

 3 固有書式、ノウハウを形式知化

 さらに、弁護士個人が作成した書式を、個人情報を匿名化した上でデータベースに登載することも考えられます。

 また、仕事をしている中で発見したノウハウなども、言語化して形式知化することによって、十分にコンテンツになり得ます。

 

第3 規格化

 1 ファイルタイプ等の統一

 このようにして収集した資料を他の弁護士と共有するに当たっては、他のメンバーにとって利用しやすい形に規格化されていることが重要です。

 例えば、閲覧用の資料は、PDFに統一されているほうが便利だと考えられます。これに対し、書式などの編集用の資料は、多くの人が使っているWord形式で統一されているほうが便利です。

 また、ダウンロードすることを前提に考えれば、ファイルサイズなども出来る限り小さくしたほうがよいと考えられます。

 

 2 タイトル付け、ラベル付け

 加えて、事後の検索を容易にするために、タイトル付けのルールをメンバー全員で合意しておくことが重要です。例えば、「記事名」「媒体名」「刊行日」などの要素を入れておくと検索がし易いと思われます。

 さらに、検索で探しづらいコンテンツには、必要に応じてラベル付けをしておくとよいと思います。

 

第4 共有

 1 共有ノートブックの作成

 そして、いよいよコンテンツを共有ノートブックに移し、チームで共有を行います。

 共有ノートブックの作成以後は、コンテンツの収集を分担したほうがいいと思います。スピード、コストの両面からです。

 また、共有によって、コンテンツの規格化の速度も早まることが考えられます。あるメンバーが投稿したコンテンツを、他のメンバーが編集するといった共同作業が可能になるためです。

 

 2 ワークチャットで資料をサジェストする

 さらに、個人的に重要だと思うのが、Evernoteに最近導入された「ワークチャット機能」です。これを利用して、有益な資料をお互いにサジェストし合うことができます。
 このようなやり取りは、普段、同僚弁護士との間で行っているものですが、ワークチャットを使うことによって、それを他事務所の弁護士との間で行うことができるのです。

 

第5 終わりに

 いかがだったでしょうか。

 一つ誤解していただきたくないのは、私は、単に時間や費用の削減のために資料の共有ということを言っているものではないということです。

 

 究極の目的は、知的生産のネットワーク化です。

 これをまずは弁護士業務の効率化として始めてみようというのが上記構想なのです。

 

 業務効率化や知的生産に関心の高い先生からのご意見をお待ちしております。

 

 

 ■ 今週の注目記事



 ここでちょっとしたコツがあるとすれば、じゃあ空き時間を有効に活用しなければと、必死に頭を回転させようとはしないことだ。
 次、なんだっけ? という程度で十分だと思う。
 これが自然にできるようになると、ひとつひとつの作業はお互いにまったく別物だったりするのに、間髪入れず連続して作業ができるようになったりする。
 技術的な作業をしていたかと思えば、数字的な作業に移り、対人作業に移り、それぞれの関係者と言葉を交わし、といった具合だ。

 

 これはその通りだと思います。

 そして、そのような動きを可能にするツールが、『マニャーナの法則』で述べられている「クローズ・リスト」です。

 

 

マニャーナの法則 明日できることを今日やるな

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  • 作者: マーク・フォースター,青木高夫
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 近いうちに、タスク管理に絡めて同書の内容を紹介したいと思っています。