私的データベース構想の概要
第1 はじめに
私は、昨年12月に以下のツイートをしました。
判例秘書等のデータベースは、便利ではありますが、料金が高い上、日常業務に必要なコンテンツが網羅されているとは限らず、いわば「鶏を割くに牛刀を用いる」状態です。
そこで、Evernoteをプラットフォームとする私的データベースプロジェクトを立ち上げます。興味のある方は連絡下さい。
— おでんや(Yu Numakura) (@odenya2) 2014, 12月 19
法令や判例などのリサーチ業務は、企業法務に就いている弁護士に限らず、町弁にとってもしばしば必要です。
そのようなリサーチ業務に要する資料へのアクセスについて、私は、これまで個人レベルで工夫を行ってきました。Evernoteをプラットフォームにした資料の収集・管理です。
ところで、その過程で、現在個人で行っているような工夫をチーム単位で行うことができれば、業務効率化を数倍に加速することができるのではないかと考えるようになりました。
それが、以下に述べる「私的データベース構想」です。
すなわち、①データベースを構成する資料を「収集」する段階、②他人が使用できる形に資料を「規格化」する段階、そして③資料をチームで「共有」する段階を循環させることによって、無限に成長していくデータベースを作ろうという構想です。
第2 Evernoteへの収集
1 紙の資料をスキャン
民間のデータベースの難点は、何よりもコンテンツが既定されていることです。そのため、日常業務に必要な資料が網羅されていない反面、必要のない資料が多数登載されていたりします。そして料金が高いのです。
これに対し、私的データベースであれば、コンテンツは自由自在です。
例えば、スキャナーがあれば、紙媒体でのみ提供されている資料をデータベースに取り込むことができます。
2 WEB上の書式を収集
また、WEB上の公開情報にも有益なものが多くあります。
例えば、各地方裁判所が公開している申立書の書式などは、これを加工することによってそのまま業務に使用することができます。
3 固有書式、ノウハウを形式知化
さらに、弁護士個人が作成した書式を、個人情報を匿名化した上でデータベースに登載することも考えられます。
また、仕事をしている中で発見したノウハウなども、言語化して形式知化することによって、十分にコンテンツになり得ます。
第3 規格化
1 ファイルタイプ等の統一
このようにして収集した資料を他の弁護士と共有するに当たっては、他のメンバーにとって利用しやすい形に規格化されていることが重要です。
例えば、閲覧用の資料は、PDFに統一されているほうが便利だと考えられます。これに対し、書式などの編集用の資料は、多くの人が使っているWord形式で統一されているほうが便利です。
また、ダウンロードすることを前提に考えれば、ファイルサイズなども出来る限り小さくしたほうがよいと考えられます。
2 タイトル付け、ラベル付け
加えて、事後の検索を容易にするために、タイトル付けのルールをメンバー全員で合意しておくことが重要です。例えば、「記事名」「媒体名」「刊行日」などの要素を入れておくと検索がし易いと思われます。
さらに、検索で探しづらいコンテンツには、必要に応じてラベル付けをしておくとよいと思います。
第4 共有
1 共有ノートブックの作成
そして、いよいよコンテンツを共有ノートブックに移し、チームで共有を行います。
共有ノートブックの作成以後は、コンテンツの収集を分担したほうがいいと思います。スピード、コストの両面からです。
また、共有によって、コンテンツの規格化の速度も早まることが考えられます。あるメンバーが投稿したコンテンツを、他のメンバーが編集するといった共同作業が可能になるためです。
2 ワークチャットで資料をサジェストする
さらに、個人的に重要だと思うのが、Evernoteに最近導入された「ワークチャット機能」です。これを利用して、有益な資料をお互いにサジェストし合うことができます。
このようなやり取りは、普段、同僚弁護士との間で行っているものですが、ワークチャットを使うことによって、それを他事務所の弁護士との間で行うことができるのです。
第5 終わりに
いかがだったでしょうか。
一つ誤解していただきたくないのは、私は、単に時間や費用の削減のために資料の共有ということを言っているものではないということです。
究極の目的は、知的生産のネットワーク化です。
これをまずは弁護士業務の効率化として始めてみようというのが上記構想なのです。
業務効率化や知的生産に関心の高い先生からのご意見をお待ちしております。
■ 今週の注目記事
ここでちょっとしたコツがあるとすれば、じゃあ空き時間を有効に活用しなければと、必死に頭を回転させようとはしないことだ。
次、なんだっけ? という程度で十分だと思う。
これが自然にできるようになると、ひとつひとつの作業はお互いにまったく別物だったりするのに、間髪入れず連続して作業ができるようになったりする。
技術的な作業をしていたかと思えば、数字的な作業に移り、対人作業に移り、それぞれの関係者と言葉を交わし、といった具合だ。
これはその通りだと思います。
そして、そのような動きを可能にするツールが、『マニャーナの法則』で述べられている「クローズ・リスト」です。
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近いうちに、タスク管理に絡めて同書の内容を紹介したいと思っています。