弁護ハック!-若手弁護士によるライフハックブログ

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司法修習生の就職活動考 ~公募に頼らない就職活動~

1 問題意識

 元日付けの「日弁連新聞」の報道を引用するまでもなく、司法修習生の就職難は深刻です。

 しかも、就職が決まらない理由は当の本人にもわからないことが多く、終わりの見えない就職活動に途方に暮れるしかありません。私自身、就職活動には非常に苦労し、一時は就活うつになるんじゃないかというほど落ち込んだ時期もありました。

 しかし、就職活動を終えてみて、なかなか就職が決まらないのは本人の能力の問題ではなく構造的な問題であること、そして(逆説的ですが)この就職難は個々の司法修習生の工夫によって乗り越えられることに気付きました。

 そこで、今回は司法修習生の就職活動に関する私の考えをまとめてみようと思います。

 

2 司法修習生の就職活動の現状

(1) 法律事務所の分類

 

 

     公募している

      公募していない

人気が高い

 

        ①

       競争過多

        

         ③

       競争少なめ

人気がない

 

       ②

     競争少なめ

 

         ④

         競争なし

  

 司法修習生の就職活動の対象となる法律事務所を分類すると、以上の図の通りになると思います。すなわち、①公募しており、人気の高い事務所、②公募しているが、人気のない事務所、③公募していないが、人気の高い事務所、④公募しておらず、人気もない事務所です。

 

① 公募しており、人気の高い事務所

 その典型例は、東京や大阪といった大都市の有名事務所や伝統のある事務所です。成長が期待できる、待遇が良い、カッコイイなどの理由により、司法修習生の人気が非常に高いです。そのため、狭い採用枠をめぐり競争は極めて激しくなります(求人倍率が数百倍になることもあると聞きます)。

 

② 公募しているが、人気のない事務所

 ひまわり求人ナビに求人は載っているが、司法修習生があまり応募しない事務所です。地方にある事務所や様々な理由でクセのある事務所、評判の悪い事務所、待遇が劣悪な事務所などがこれに当たります。

 個々の司法修習生との相性によっては良い事務所になりますが、いわゆる一般受けしないため、相対的に人気は低くなっています。

 

③ 公募していないが、人気の高い事務所

 地域では名門と言われる事務所がこれに当たります。口コミで司法修習生が集まるため、あえて公募していないというところも多いです。

 

④ 公募しておらず、人気のない事務所

 司法修習生の目に触れること自体が少ないですが、②と同様、個々の司法修習生との相性によっては良い事務所になります。

 

(2) 就職活動の現状

 66期司法修習生の就職活動を振り返ってみると、公募のみに頼って就職活動している人が大半でした。

 先に述べた通り、①に分類される法律事務所は競争過多です。そのような法律事務所に合計100通近い履歴書を送り、一つも内定を得られない人もざらではありません。

 そのため、当初は①の事務所を中心に応募し、内定が得られないことがわかると徐々に人気のない事務所、すなわち先の分類でいう②の事務所への応募を始め、内定を得ていくというのが多くの司法修習生にとっての就職活動であったように思います。

 

(3) 現状を打開するためには

 しかし、①及び②の事務所の絶対数は限られています。それにもかかわらず、大半の司法修習生が①と②の事務所ばかりを目指して就職活動をしているのですから、就職にあぶれる人が出てくるのは必然だと思います。

 また、個々の司法修習生にとっても、①の事務所に就職できないから②の事務所に手を伸ばし、それでも決まらないからどんどん条件を下げ・・・、とやっているとすぐにジリ貧になってしまいます。

  そこで、公募していない③及び④の事務所へのアプローチの仕方を学ぶことは、個々の司法修習生にとって、また法曹界全体にとっての課題なのではないでしょうか。

 以下では、そのような非公募事務所への就職活動の方法を検討していきます。

 

3 公募に頼らない就職活動

(1) 非公募事務所への内定の条件

 公募していない法律事務所の場合、採用の門戸を開いてもらうためには、何よりもまずその事務所のボスにアプローチする必要があります。

 ただし、事務所のボスと直接知り合い、気軽に言葉を交わすことができるならいいですが、期の古い先生だと公の場に出てくること自体が少なく、また仮に出てきたとしても気軽に言葉を交わすことは普通の司法修習生にとって困難です。そのため、実際には、そのボスとつながりを持っている人(事務所のイソ弁、会内の弁護士など)から紹介をしてもらうのがセオリーということになります。

 したがって、以下では、①事務所のボスまたは紹介者と出会うためにはどうしたらよいか、そして②ボスによる採用や紹介者による紹介を得るためにはどうしたらよいかを検討していきます。

 

(2) ボス・紹介者と出会うためには

 まず、従来からの知り合いを頼る方法があります。親族や友人、大学・ロースクールの恩師などが考えられます。

 また、修習地では、指導担当弁護士や修習先の所属弁護士はもちろん、委員会活動などを通じて弁護士会内の他の弁護士と知り合うこともできます。そのような意味では、修習地で採用口を探すのが最も有効な活動だと言えそうです。

 さらに、他会の弁護士と知り合う方法もあります。

 例えば、日弁連が開く就職相談会には様々な地域の弁護士がチューターとして参加しているので、就職を希望する地域の弁護士がいたら積極的に頼ってみると良いと思います。また、イベントや勉強会などには積極的に顔を出すと良いと思います。

 要するに、弁護士との出会いに制限はなく、興味のある場所には果敢に飛び込んでいくといいでしょう。 

 

(3) ボスによる採用や紹介者による紹介を得るためには

ア 私がなかなか内定を得られなかった理由

 しかし、単に弁護士との出会いを増やすだけでは、採用や採用につながる紹介を受けることはできません。

 なぜなら、多忙な弁護士にとって、懇意でもない司法修習生の就職は結局他人事であり、様々な負担を背負って採用や採用につながる紹介をしようという気にはならないためです。

 私自身、一時期弁護士の知り合いをものすごく増やした時期がありましたが、結局そこから採用や採用につながる紹介を受けることはできませんでした。

 その理由は、私が、その先生方に就職のことを親身に考えてもらうことができなかったからです。

 

イ 積極的に甘えること

  では、事務所のボスや紹介者に親身になってもらうにはどうしたらよいか。それは結局、相手に甘えることに尽きると思います。

 具体的に言えば、「弁護士になる強い熱意を持っている、就職活動も頑張ってる、それなのに就職が決まらない、○○先生助けてください!」という一言が言えるかどうかだと思います。これが言える人はすぐに就職が決まります。

 私の場合、困った末に助けを求めたのは指導担当弁護士でした。そうしたところ、指導担当弁護士が今の事務所を紹介して下さり、1か月後には無事に内定を得ることができました。

 弁護士は多忙です。助けを求めてこない司法修習生に対しては大丈夫だろうと判断し、手を差し伸べることはしません。

 しかし、自分に助けを求めてくる司法修習生は、何があっても助けようとします。それが職業精神であるのかもしれません。

 

4 最後に

(1) 司法修習生に欠けていること

 以上をまとめると、①採用や紹介のツテを探して弁護士の集まりに参加していくことのできる積極性と②他人に甘えることのできる謙虚さがあると、非公募での就職活動が上手くいくと思います。

 しかし、司法修習生の多くは、これに反して①'引っ込み思案であり、②'プライドが高く甘え下手なのではないでしょうか。私自身、そのような人間であったため、就職活動には苦労しました。

 ただ、一応司法修習を終えた者として、今の司法修習生にアドバイスするとしたら、次の通りになると思います。

 

(2) 自信を持っていこう

 弁護士の集まりに参加するのをためらうのは、自分が参加したら先生方に迷惑ではないか、図々しいと思われるのではないかと考えてしまうためではないでしょうか。

 しかし、弁護士はほぼ例外なく司法修習生が大好きです。なぜなら、自分自身がかつて司法修習生だったからです。

 したがって、諸先輩方に教わる姿勢を持って、集まりにはどんどん参加しましょう。

 さらに言えば、司法修習生はもっと自信を持つべきです。

 司法試験に合格するというのはやはり立派なことです。法曹になるという目標を立て、堅実に努力し、ついに目標を達成したのですから。

 胸を張っていきましょう。

 

(3) 承認欲求と就職活動を切り離そう

 人には誰しも誰かに認めてもらいたいという欲求があります。そのため、就職活動では、採用側に能力を認めてもらい、大げさに言えば「是非ともうちに来てもらいたい!」と請われて就職したいと考えてしまいます。

 しかし、本記事で書いた通り、司法修習生の就職活動で必要なのは必ずしも能力ではありません。

 したがって、承認を求めて就職活動をするのはやめましょう。内定のある周りの同期も、ボスから能力を見込まれて内定を得ているわけではありません。

 私のボスは、新人弁護士は「殻のついたヒヨコ」だと言っています。孵化したばかりの未熟な存在という意味です。

 熟練の弁護士から見たら新人なんてそんなものです。どうしても認めてもらいたいのであれば、就職した後、仕事を通して認めてもらいましょう。

 

(4) 就職活動を楽しむ

 最後に、非公募の就職活動は楽しいです。

 弁護士をはじめとする様々な人と出会い、話をする中でたくさんのことを学び、最終的に人格や識見に惚れ込んだボスに仕えることができます。

 公募に頼った就職活動に行き詰りを感じている方がいたら、一旦立ち止まって、他の方法がないか考えてみてください。