弁護ハック!-若手弁護士によるライフハックブログ

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「ボス弁」という仕事(「ボス弁」論「第1 序論 ~ボス弁自身の成長が何よりも重要~」)

全体目次

第1 序論 ~ボス弁自身の成長が何よりも重要~
1 「ボス弁」という仕事
2 勤務弁護士の育成はエゴ・マネジメントを試される仕事である
3 他者は変わらない

第2 採用論
1 成人発達理論に基づく採用基準の策定
2 採用基準の具体例

第3 育成論
1 基本的な心掛け
2 勤務弁護士の成長に対する支援

 

 私は、2020年12月に初めて勤務弁護士を雇用して以来、現在まで常時一人以上の勤務弁護士を雇用し、育成してきた。これは私の弁護士としてのキャリアにおいて大きな転換点であった。

 すなわち、私は2013年12月に弁護士登録をし、勤務弁護士を経て独立したが、そのキャリアのいずれにおいても弁護士を雇用し、あるいはその育成に責任を負ったことはなかった。そして、そのような立場でいる間、私は自分の仕事のパフォーマンスを如何に発揮し、向上するかを考えていれば十分だった。

 ところが、いざ勤務弁護士を雇用し、その育成に責任を負うようになると、彼らの仕事のパフォーマンスを高める方法を考えなければならなくなった。そして、勤務弁護士を育てる際には、かつて自分が成功した方法を勧めたり、押し付けたりすることはむしろ有害であり、これまでプレーヤーとして培ってきたのとは異なる能力が求められることとなった。

 私は当初、そのことに気付かずに数々の失敗をしてきた。つまり、「善意」でアドバイスをしているにもかかわらず、勤務弁護士がそのアドバイスを受け入れないことに不満を鬱積したことが幾度となくあった。また、そのような不満を鬱積すればするほどに、勤務弁護士とのコミュニケーションが悪化し、かえって育成は上手くいかなくなっていった。

 そして、勤務弁護士の育成が上手くいかないと、更に不満が鬱積するという悪循環に陥った。また、勤務弁護士のパフォーマンスが向上しないのであるから、自分の抱える業務量が増大する一方、利益は減少するという最悪の状況に陥った。

 

 私は、最初、そのような状況に陥ったことを勤務弁護士のせいにしようとした。しかし、あるときにふと気付いた。その人を採用したのは他でもない自分じゃないかと。[1]

 結局、私は「ボス弁」という仕事のことを全く知らずに「ボス弁」を始めてしまったのである。そのため、採用において失敗をし、育成でも失敗をした。ただそれだけのことである。

 

 そのような反省を経て、私は「ボス弁」という仕事[2]を考察し、その仕事に正面から向き合おうと考えるようになった。そのため、これから記すのは、そのような私の考察の現状における到達点である。

 

 

[1] 「原因自分論」という考え方があるが、正にそのとおりだと思う。

[2] なお、「ボス弁」の定義は多義的であるが、本稿では「一人以上の勤務弁護士を雇用し、育成する責任を負っている弁護士」と定義する。