第1 はじめに
既に記事にしているとおり、私は、今年の春からNozbeとTaskchuteというツールを使ってタスク管理を行ってきました。
私がタスク管理を始めた主な理由は、タスクの先送りを防ぐことにありました。この点、確かにタスク管理を本格的に初めて以来、タスクの先送りは格段に少なくなりました。
しかし、最近になって、タスク管理をしているにもかかわらず先送りの生じてしまうタスクがあることに気付きました。
そして、先送りが生じてしまう原因は、タスク管理自体にあるのではなく、私のやり方に問題があるためだということに気付きました。
そこで今回は、タスクの先送りが生じる原因に関連して、私のタスク管理のどこに問題があり、どのように改善することになったかを紹介したいと思います。
第2 先送りが生じる3つの原因とその対策
1 先送りが生じる3種類のタスク
さて、タスク管理をしているにもかかわらず、先送りが生じてしまうタスクを分析したところ、次の3つの種類に分類できることがわかりました。
① 書き出されていないタスク
=(頭の中で「やりたい」と思っているだけ)
② 期限の定められていないタスク
=(「いつか」やりたいと思っているだけ)
③ 実行する日が決まっていないタスク
=(「あの日までにやろう」と思って先送りにしている)
書き出されていないタスクとは、頭の中で「やりたい」と思っているだけで、放置されているタスクのことです。そのようなタスクは、日々の忙しさに紛れてしまい、いつまでも実行されることがありません。
期限の定められていないタスクとは、書き出されてはいるものの、「いつまでに」やるかが定まっていないタスクのことです。期限の定められていないタスクは、緊急性を持たないため、緊急性の高い他のタスクに押しやられてしまいます。
実行する日が決まっていないタスクとは、期限は決まっているものの、実際に取り掛かるが決まっていないタスクのことです。このようなタスクは、少なくとも期限が目前に迫るまで放置されてしまいます。
2 タスクの先送りを防ぐためには
しかし、先送りが生じる原因がわかっていれば、対策を施すことにより、先送りを防ぐことが可能です。
すなわち、先の3種類のタスクに対しては、それぞれ次のとおり先送りを防ぐ対策を施すことになります。
① 書き出されていないタスク
→ タスクを漏れなく書き出す
② 期限の定められていないタスク
→ 各タスクについて期限を定める
③ 実行する日が決まっていないタスク
→ デイリータスクリストにタスクを登録する
さて、ここまで考えて、あくまで先送りの防止を目的とする場合、タスク管理には一定の踏むべきステップがあることに気付きました。
それが以下で述べる、①タスクの書き出し、②期限設定、③デイリータスクリストへの登録・実行の各ステップです。
第3 タスク管理の3ステップ
1 タスクの書き出し
まず、タスクの書き出しでは、原則としてボトムアップ型のアプローチを取ることになります。すなわち、目的を達成するまでに必要となる「次に取るべき行動」を繰り返し考えていくというものです。
例を挙げます。ある訴訟で次回の期日までに当事者(依頼者)の陳述書を裁判所に提出しなければならないとします。事件の担当となったあなたが次に取るべき行動は何でしょうか。
必要なタスクとして、
・ 依頼者と打合せをする
というのが思い浮かぶと思います。
しかし、依頼者と打合せをするためには、
・ 依頼者に電話を掛けて、打合せ日程を調整する
というタスクが必要となりますし、さらにその前には、
・ 打合せ可能な日時を洗い出す
といったタスクが必要です。
そのため、陳述書を裁判所に提出するまでに必要となる「次に取るべき行動」を順次書き出していくと、次のようなタスク群が明らかとなります。
・ 打合せ可能な日時を洗い出す
・ 依頼者に電話を掛けて、打合せ日程を調整する
・ 依頼者と打合せをする
・ 陳述書を作成する
・ 陳述書についてボス弁の決裁を得る
・ 陳述書に依頼者の署名・押印をもらう
・ 陳述書を裁判所に提出する
2 期限設定
次に、書き出されたタスク群について期限を設定していくことになります。
タスクの書き出しがボトムアップ型のアプローチだったのに対し、期限は、より後ろのタスクから順に設定していくことになるため、いわばトップダウン型のアプローチとなります。
例えば、次回の裁判期日が12月24日だったとすると、陳述書の提出は、その1週間前である12月17日と決まります。
したがって、
・ 打合せ可能な日時を洗い出す
・ 依頼者に電話を掛けて、打合せ日程を調整する
・ 依頼者と打合せをする
・ 陳述書を作成する
・ 陳述書についてボス弁の決裁を得る
・ 陳述書に依頼者の署名・押印をもらう
・ 陳述書を裁判所に提出する ← 12月17日
このように、最も後ろにある「陳述書を裁判所に提出する」というタスクの期限が最初に決まることになるのです。
そして、これを前提に、順次その前にあるタスクの期限を定めていくことになります。
・ 打合せ可能な日時を洗い出す ← 11月28日
・ 依頼者に電話を掛けて、打合せ日程を調整する ← 11月28日
・ 依頼者と打合せをする ← 12月 8日
・ 陳述書を作成する ← 12月10日
・ 陳述書についてボス弁の決裁を得る ← 12月12日
・ 陳述書に依頼者の署名・押印をもらう ← 12月15日
・ 陳述書を裁判所に提出する ← 12月17日
3 デイリータスクリストへの登録・実行
最後に、デイリータスクリストに各タスクを登録していきます。その際に意識すべきことは、定められた期限よりも前倒しでタスクに取り掛かることです。
どういうことかというと、先のステップで「依頼者に電話を掛ける」というタスクの実行期限を11月28日と定めましたが、依頼者が何らかの事情でその日に電話に出られない可能性があるため、11月28日に取り掛かったとしても同日中にタスクが完了するという保証はありません。そして、タスクの完了が遅れた場合、順次後ろのタスクの予定に遅れが生じる恐れがあります。
さらに、このようなタスクの完了の遅れは、相手側の都合に限らず、割り込みタスクや所要時間の見積りミスといった自分の側の都合によっても生じ得るものです。
そのため、タスクの実行に当たっては、ある程度の余裕を持っておく必要があります。例えば、先の「依頼者に電話を掛ける」というタスクは、11月28日のデイリータスクリストではなく、11月25日のデイリータスクリストに登録しておくべきなのです。
第4 まとめ
以上、先送りを防ぐという観点でのタスク管理手法について紹介しました。
先の3ステップを意識してタスク管理をするようになったのは比較的最近のことですが、それ以来、先送りの数は目に見えて少なくなり、それに比例してストレスを感じることも少なくなりました。日々押し寄せるタスクの波に対して、再びコントロールを取り戻したのです。
タスク管理は、基本的な考え方とツールを導入しただけでは完結しないところに奥深さがあります。自らの仕事の状況や量に応じて、常に改善していかなければならないのです。
この記事が、皆さんにとってタスク管理を見直すきっかけの一つとなれば幸いです。
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