小規模法律事務所における勤務弁護士雇用の困難 ~前文・目次~
私は、2020年12月に初めて勤務弁護士を雇用して以来、合計2名の勤務弁護士(いずれも新人弁護士)を雇用してきた。その間、私は「新人弁護士研修資料」及び「ボス弁」論という記事を書き、勤務弁護士の育成や向き合い方についての考えを記してきた。
しかし、2024年3月、私はその当時在籍していた弁護士に退職してもらい、一旦「ボス弁」としてのキャリアに終止符を打つことを決めた。なぜかというと、後述するとおり、私の勤務弁護士雇用は、少なくとも経営的に見る限りは「失敗」であったからである。
そこで、今回の記事では、私の「失敗」について原因を振り返った上で、その対策、すなわち勤務弁護士の雇用を成功させることのできる法律事務所とはどのような事務所であるかについて考えてみたい。
本記事の構成は以下のとおりである。
まず、「第1 勤務弁護士の『売上貢献率』」では、勤務弁護士雇用の鍵概念となる「売上貢献率」について解説する。法律事務所の経営もまた慈善事業ではない以上、勤務弁護士を雇用するのであれば、そのことによって利益が生じなければならない。なぜなら、利益の生じない雇用は投資の失敗にほかならず、私のようにいずれ損切りをしなければならない時期が来るからである。言い換えれば、そのような雇用は持続可能ではない。
ここまではある意味当たり前のことであるが、私はその先を具体的に考えることなく、「損にはならないだろう」と安易に考えて弁護士の雇用を開始してしまった。それが失敗の本質であったと今となっては思うのである。
次に、「第2 私の失敗の原因」では、売上貢献率という概念を手がかりとして、私がなぜ勤務弁護士雇用によって利益を上げられなかったかについて原因を探っていく。一つ前置きをしておくと、私は、失敗の原因が勤務弁護士の能力や勤勉さの不足にあったとは思っていない。むしろ、原因はいずれも私の仕組みづくりが不十分であったことや従来型の小規模法律事務所の置かれた経済構造に起因していると考えている。
最後に、「第3 勤務弁護士の雇用を成功させることのできる法律事務所」では、私の失敗を踏まえて、勤務弁護士の雇用を成功させることのできる法律事務所とはどのような事務所であるかについて考えていく。そうしてみると、必要な施策は、勤務弁護士(特に新人弁護士)を継続的に採用し、規模を順調に拡大しているような大規模・中規模法律事務所が実際に行っている施策と共通することが見えてくる。そうした中で、私のような小規模法律事務所が採り得る施策は何かについて考えていきたい。
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