弁護ハック!-若手弁護士によるライフハックブログ

「弁護士 × ライフハック × 知的生産」をテーマに、若手弁護士が日々の”気付き”を綴ります。

司法試験に関する私の考えを総括します。

第1 本記事の目的

 私は、本ブログやツイッターで、これまで司法試験に関する記事やコンテンツを公開してきました。

 しかし、合格から2年以上が経ち、本ブログはもちろん、私自身、受験指導に携わる適性を失いつつあるように感じています。

 そこで、節目として、司法試験に関する私の考えを総括しておきたいと思います。


第2 司法試験合格への3ステップ

 私は、受験生が司法試験に合格するまでに踏むこととなるステップを、以下の3つと考えています。

 

 ① 「合格答案」と「基礎知識」のイメージの確立


 ② 「基礎知識」の習得


 ③ 各人固有の弱点の確認・克服

 

 

 上記のうち、②は①を前提とし、③は①と②を前提とする関係にあります。

 そして、③のレベルを達成したとき、その受験生は十中八九合格できる実力を身に付けることができると考えています。

 

 以下、それぞれに分けて説明していきます。


第3 「合格答案」と「基礎知識」のイメージの確立

 1 2つの代表的方法 ~過去問分析と合格者のアドバイス~

 「合格答案」のイメージと「基礎知識」のイメージを確立するために、受験業界で伝統的に取られてきた方法が2つあります。

 言うまでもなく、①過去問を分析すること、そして②合格者にアドバイスを求めることです。

 

 2 過去問分析

 (1) 総論

 過去問分析に関しては、司法試験の場合、問題文とともに、法務省から公表される「出題趣旨」「採点実感」を使って分析を行っていくこととなります。

 そして、私はその中でも出題趣旨を重要視していました。出題趣旨は、具体的出題を通じて、試験委員が求める答案の形(理想形)を明らかにした資料だと考えるためです。

 私は、出題趣旨を以下のように活用していました。

 

 ①マーカーを使って要素(一般論、法的構成、事実、評価)を分析する。

 ②各要素を踏まえて出題趣旨を答案構成化する。

 ③答案構成化した出題趣旨を答案化する。

 

 (2) 各論(平成23年度刑事系第1問の甲の罪責を例に)

  ア 要素を分析する

 私の場合、赤=一般論緑=法的構成と当該年度の論点解説青=事実と評価というように色分けしていました。

 色分けの結果、平成23年度刑事系第1問の出題趣旨は以下のように分析されます。

 

    f:id:odenya2:20141109210829p:plain

 

 イ 答案構成化する

 次に、分析の結果を踏まえ、出題趣旨の要素を答案構成の形に組み立てます

 平成23年度刑事系第1問の甲の罪責については、以下のようになります。

 

    f:id:odenya2:20141109211530p:plain

 

 ウ 答案化する

 そして、先の答案構成を答案の形に仕上げます

 ここまでやることによって、出題趣旨から試験委員の求める答案の形を導くことができます。

 平成23年度刑事系第1問の甲の罪責については、以下のとおりです。

 Dropbox - 答案例(平成23年度刑事系第1問甲の罪責).pdf

 

 3 合格者のアドバイス

 大規模ロースクールであれば、毎年多くの合格者が出るため、先輩や同期から十分なアドバイスを得ることができます

 これに対し、合格者の少ない環境にいる場合は、合格者ブログを利用することになります。

 

 

 

 合格者ブログを侮ることはできません。目的意識を持って読めば、必ず「合格答案」や「基礎知識」のイメージを掴むことができます。 

 

第4 「基礎知識」の習得

 1 「基礎知識」とは?

 「合格答案」と「基礎知識」のイメージを掴んだ上で、合格に不可欠な「基礎知識」を学んでいくことになります。ここでいう「基礎知識」とは、条文・判例・基本原理(ex.弁論主義)のことです。

 司法試験業界においては、「基礎知識」のイメージがないままに勉強をしている受験生があまりに多いと言わざるを得ません。

 受験勉強の目的は合格するレベルに達することであり、それは試験委員の求めるレベルと現状との差を埋めることに他なりません。そのためには、まず試験委員の求めるものを把握することが不可欠であり、それができないといつまでもあさっての方向に勉強を進めていくことになってしまいます。

 私自身、かつてはあさっての方向に向かって勉強していたため、その救いの無さはよくわかります。

 

 

 2 条文

 基礎知識の最たるものは条文です。そして、条文を理解する最善の方法は、六法を素読することです。

 また、短答式試験の過去問も条文学習に適しています。

 そう思い、かつて短答式試験のスマートフォンアプリの開発に着手したこともありましたが、時間が確保できず、頓挫してしまいました。

新司法試験短答式肢別演習教材【トライアル版】 - Google Play の Android アプリ

 

 もっとも、他の方が私のものよりも優れたアプリケーションを開発してくれたので良しとしましょう。

司法試験短答式アプリ Tantow 択一 法科大学院 - Google Play の Android アプリ

 

3 判例・基本原理

 条文の次に重要な基礎知識が、判例基本原理です。そして、これらを学ぶ最適の教材が「最高裁判所判例解説」、いわゆる調査官解説です。

 司法試験への出題可能性等を踏まえて、差し当たって読むべき調査官解説については、以前記事にまとめました。

 

 また、 調査官解説の用い方についても、詳しく記事にまとめています。

 

第5 各人固有の弱点の確認・克服

 基礎知識が一定程度習得できれば合格は目前です。最後にやらなければいけないのは、自分固有の弱点を確認し、克服することです。

 私の場合、途中答案が最大の弱点でした。必ず尻切れトンボになってしまうのです。

 そこで、直前期には徹底的に途中答案を防ぐ対策をしていました。その苦闘については、かつて記事にしています。

 

 

第6 まとめ

 以上、司法試験に関する私の考えを総括しました。

 既におわかりのとおり、これだけ司法試験ブログの充実している現在、合格するための方法論は確立したといっても過言ではありません。少なくとも私はそう考えています。

 だから、合格を目指している人は、情報を大切にして下さい

 私の基本的な考えは、3年近く前につぶやいた以下のツイートから何ら変わるものではありません。

 

新司においては、正しい勉強の目標も方法も様々な資料によって示されています。かつての僕を含め成績の伸びない人に共通するのは、①そもそも資料の存在を知らない(情報収集力の低さ)、②資料に接しても何も感じない(情報感受性の低さ)、③何か感じても自分のやり方にこだわる(頑固さ)、です。

2012年2月6日 @odenya2 

 

 masoブロさんの言うとおり、「方法は必ずある」のです。

 本記事を読んだことが、そのことに気付く一つのきっかけとなれば幸いです。

 

 

 

■今週の注目記事



  『TQ』『7つの習慣』で紹介されている「ミッション・ステートメント」についての記事です。

 何を隠そう、私もつい先日、自分の価値観を振り返るために10箇条からなるミッション・ステートメントを作成してみました。

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