弁護ハック!-若手弁護士によるライフハックブログ

「弁護士 × ライフハック × 知的生産」をテーマに、若手弁護士が日々の”気付き”を綴ります。

途中答案は100%防げる?【学生時代の記事の再掲】

 論文式試験の試験時間は120分あり、前半の答案構成パートと後半の記述パートに分けることができます。その比率は人それぞれだと思いますが、私は答案構成パート30~35分、記述パート85~90分を目安にしています。

 そして、圧倒的に大切なのは約30分間の答案構成パートです。「大工は家を二度作る」と言われますが、「試験」もまさにそんな感じです。記述パートで作られる現実の答案は、答案構成パートで観念上作られる答案を文章化したものです。「観念」以上のものを作ることができないからこそ、「観念」をそのまま再現することが求められます。

 

1.答案構成パートでしなければならないこと

 答案構成パートでしなければならないことを整理してみます。

 まず、①設問を読むことです。「試験」は、設問に正しく答えることに尽きます。その重要性については私自身苦い経験がありますし、過去の記事でも何度か触れてきたところなので、あえて繰り返すことはしません。

 次に、②問題文(+会話文)を読むことです。新「試験」が旧「試験」と異なる部分は、問題文が長いことです。これは書かなければならない事実が多いことも意味しますが、同時に出題者の意図を読むためのヒントともなります。問題文を深く読むことの重要性も改めて繰り返すことはしません。

 そして、①、②を踏まえて、③答案構成をすることです。

 以上です。

・・・と言うと、「アレ?」と思う人もいれば、「そうそう」とうなずく人もいると思います。私もつい最近まで③で終わっていました。

 しかし、合格者ブログ等を読んでいると、答案構成パートでは少なくとももう一つの作業をしなければならないようです。それが、④答案の配分を決めることです。

 

2.途中答案の原因

 恥ずかしながら、これまでの私の途中答案率は半端ではありません。学部時代も含めると優に50%を超えるのではないでしょうか。しかも、「以上」と書けない途中答案がそれだけある上に、後半が急激に尻すぼみになる実質途中答案を含めると、その率は8割を超えるかもしれません。

 その原因として、私はずっと書く分量が足りないからだと思ってきました。しかし、周りを見渡してみれば、私よりも分量の少ない人がきちんと答案を完成させています。その一方で、私は6頁書けるようになっても途中答案をやる。

 よく考えてみれば、たとえ答案を3頁しか書けない人であっても、一つ一つの項目を簡潔に書けば答案を完成させることができます。途中答案の原因、それは例外なく配分ミスにあることに気付きました。

 

3.配分の具体的方法

 平成23年刑訴を素材として配分の具体的方法を書いてみます。

 

(1) 設問・問題文を読み、設問ごとの仮の配分を決める

 「仮の」と書きましたが、設問ごとの配点が決まっている民法、民訴、行政法については、設問ごとの配分はこの時点で確定します。これに対し、刑訴のように配点の明示されていない科目は、答案構成前に仮の配分を決めておく必要があります。

 設問・問題文の中でも、最も参考にすべきは各設問に関する事実の量だと思います。他には設問中の小問の量も参考にします。

 平成23年刑訴であれば、設問1には小問が4つ(【逮捕①】~【逮捕④】)あり、さらに小問ごとに論ずべき問題点が2つずつ(逮捕と身柄拘束)あります。そして事実の量も多い。これは骨が折れそうだな、と思います。

 他方で、設問2には小問が2つ(【資料1】と【資料2】)です。しかし、資料を読むと登場人物が多くて、それぞれの供述について伝聞該当性、伝聞例外の要件具備を検討するとなると、こちらもそれなりに負担がある。

 そこで、配分は6:4かな、と考えます。

 しかし、ここで重要なのが、配分を行うそもそもの目的です。それは「途中答案を防ぐこと」、「書き過ぎによる配分ミスをしないこと」でした。

 そのため、あえて冒頭の設問の配分は少なめに見積もっておきます(ただし、配点の明示されている科目は除く。)。そこで、仮の配分は5.5:4.5などとします。

 

(2) 答案構成をし、設問ごとの配分の確定、小問ごとの配分の確定を行う

 仮の配分を念頭に答案構成をします。

 すると、設問2が思った以上に重いことに気付きます。「ん?この問題は被告人が二人だから、伝聞例外の適用条文がややこしくなるぞ・・・。」。結局、保険の意味も込めて、設問1の配分を減らし、設問2の配分を多めに見積もることにしました。最終的に、設問1:設問2=5:5と確定しました。

 さらに、小問ごとの配分を決めておくことにより、設問内での書き過ぎを防ぐことができます。設問1につき、【逮捕①】:【逮捕②】:【逮捕③】及び【逮捕④】=2.5:1.5:1などとします。設問2につき、【資料1】:【資料2】=4:1などとします。このときにも、あえて冒頭の小問の配分は少なめに見積もっておきます。

 

(3) 行数に割り振る、答案用紙にマークを付けておく

 配分の仕方は、時間で管理する方法もあると思いますが、私は行数で管理しています。

 残り時間を前提に、自分の書くことのできる行数を計算します。このときも、配分の目的を意識して少なめに行数を見積もっておきます。

 5頁(115行)→110行

 5頁半(126行)→120行

 6頁(138行)→130行

 6頁半(149行)→140行 

 7頁(161行)→150行

 といった具合です。(ページ数×2+1)×10と覚えておくといいかもしれません。

 6頁(130行)なら、1割で13行、0.5割で6行となります(7行じゃなくて6行になる理由については省略)。

 そして、設問ごと、小問ごとに、答案用紙の書き始める予定の行に鉛筆でマークを付けておきます。先ほど決めた配分でいえば、【逮捕①】は32行で書くことになるので、33行目に【逮捕②】のマークを付けます。

 

4.まとめ

 複雑で面倒くさい、あるいは形式ばっていて嫌だと思う人もいるかもしれません。計算を本番で間違えたときは致命的だと思うかもしれません。

 答案の配分については個人のセンスも大きいような気がします。元々できる人にとって、ここで説明してきたような方法はかえって時間の無駄にしかならないのかもしれません。

 しかし、私の目下の「落ちる原因」は途中答案や尻すぼみ答案なので、突き詰めて考えてみました。私と同じような悩みに直面している方の参考になれば十分だと思っています。