弁護ハック!-若手弁護士によるライフハックブログ

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短答式の学習について【学生時代の記事の再掲】

 短答式の勉強がだいぶ煮詰まってきたので、これまでに採ってきた勉強方法について書きたいと思います。「院」の新3年生の参考になれば幸いです。

 

1.使用した教材

 基本的に、

 ① 新「試験」の過去問(プレテスト~平成23年度)

 ② 判例六法(『岩波 判例セレクト六法』)

の二つです。

 これに加え、必要に応じて

 ③ 各科目の基本書

 ④ 判例百選

を参照しました。

 もっとも、参照したのは主に勉強の初期段階で、最近はほとんど使っていません(ただし、憲法は除きます。その理由については後述します。)。

 

2.学習の経緯とその方法

(1) 2011年4月~9月

 私が短答式の勉強を始めたのは、昨年の4月です。

 過去問を本試験と同じ時間制限で解き、復習を詳しくやるという方法を採りました。4月にプレテストを解き、5月に平成18年、6月に平成19年、7月に平成20年、9月に平成21年と平成23年、というように、ほぼ1ヶ月に一年度というペースで過去問を解きました。

 肢別等の教材を使わなかった理由は、全科目の教材を揃えるためにはそこそこのお金がかかってしまうと思ったからです。そのため、ひとまず過去問で勉強してみて、行き詰ったら肢別を買おうと考えました。

 当初、プレテストの点数は約200/350。足切りからのスタートでした。

 復習の方法で最も気を付けていたのは、極力法セミ等の解説を読まないようにすることでした。そして、正解した問題も間違えた問題も、全ての肢の正誤の理由を、条文、判例に照らして自分の頭で考えるようにしました。参照するのは、第1に条文。第2に判例六法に掲載されている判例。それでもわからないときは基本書や百選、というように、参照する教材の優先度にも気を配りました(その効用については後述します。)。

 また、条文に当たったときは、前後の条文をはじめとして、当該法制度全体の復習をするように心がけました。類似の問題が少し視点を変えて問われた場合にも正答できるようにしておくためです。

 その結果、9月に平成23年の問題を解く頃には、十分合格点を取れるようになりました。このように順調に点数を伸ばすことができたのは、上記の勉強方法が自分に合っていたことに加え、同じことが視点を変えて問われるという短答式「試験」の特徴も大きいと思っています。

 

(2) 2011年9月~12月

 9月から条文素読を始めました。これまで過去問を解いてきた経験から、求められている知識の大部分は条文だと考えたからです。

 当初は判例六法の判例部分まで読んでいましたが、これではあまりに効率が悪いことに気付きました。そこで、1周目はひたすら条文だけを読む方針に切り替えました。

 条文を読む際には、制度趣旨や条文の背後にある利益の対立に思いを馳せるようにしました。この視点が特に有効だったのが会社法です。会社法の条文は一見すると無味乾燥で、私も以前まで苦手意識を抱いていましたが、一度素読してみるとその構造の緻密さに魅了されました。条文の文言だけでなく、趣旨をセットで理解することによって、記憶効率が格段に上がりました。

 条文の「趣旨」と言いましたが、決してコンメンタール等を参照したわけではありません。それまでに蓄積された基本書等のおぼろげな知識を借りながら、条文ごとにその趣旨を推論していきました。細かく見れば理解が不正確な部分もあるのかもしれませんが、条文構造を覚えるだけであればこれで十分だと割り切りました。

 読んだ法律を挙げると、

 ① 憲法、② 行政事件訴訟法、③ 行政手続法、④ 行政不服審査法、⑤ 国家賠償法、⑥ 行政代執行法、⑦ 情報公開法、⑧ 行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律、⑨ 国家行政組織法、⑩ 民法、⑪ 借地借家法、⑫ 商法(628条まで)、⑬ 会社法特別清算を除く。)、⑭ 手形法、⑮ 小切手法、⑯ 民事訴訟法、⑰ 刑法、⑱ 刑事訴訟法、です。

 参照頻度は多くありませんが、国会法、内閣法、人事訴訟法警察官職務執行法裁判員の参加する刑事裁判に関する法律等も読みました。

 その甲斐あってか、12月に平成22年の問題を解く頃には、安定して高得点が取れるようになりました。

 

3.短答式の学習、何をすべきか

(1) 過去問の分析

 過去問分析は、論文式だけでなく、短答式においても大切だと思います。以前ブログ記事にも書いたことですが、過去問1~2年分だけでいいので、①求められている知識の内容、②出題の傾向、③文章のパターン、等について詳しく分析してみることを勧めます。私は、昨年12月に、平成23年と平成22年の問題について詳しい分析をしました。

 また、前述した、"解説を読まずに自分の頭で考える"という方針がここで活きました。出題のタネとなった条文や判例に直接当たるようにしていたので、過去問を通じて求められている知識内容がおぼろげにわかっていました。

 

(2) 憲法以外の科目で求められている知識内容

 結論から言えば、求められていることの大部分は条文の知識だと思います。そのため、短期間で点数を伸ばしたいと考えるならば、条文をひたすら素読することが一番だと思います。

 判例の知識が正面から問われることもありますが、それは民法94条2項の「第三者」や同法145条の時効の援用権者(「当事者」)といった抽象的文言が問題となる場合です。問題中の肢の全てにわたって判例の知識が求められることはそれほど多くありません。

 さらに、一言に判例と言っても、出題頻度が高いのは圧倒的に民集刑集に掲載された判例です。

 条文>民集刑集判例>その他の最高裁判例、という優先度を見失わないように勉強することが大事です。

 

(3) 憲法で求められている知識内容

 これは私自身とても苦しみました。

 人権の分野では、判例を細部まで理解していることを求めているように思えます。百選の要約や裁判所HPに掲載されている「裁判要旨」を押さえているだけでは太刀打ちできない問題がしばしば出題されます。また、統治の分野では、条文に記載されていない基本原理が問われます。

 憲法は、判例六法では不十分である点で特殊です。理想的には、判決原文を読んだり、野中ほか『憲法Ⅰ・Ⅱ』といった基本書の内容を正確に理解している必要があります。

 しかし、憲法最高裁判例は、いくら数が限定されていると言っても150程度はあるはずです。基本書もそこそこの分量があります。その全てについて短答プロパーの勉強をするのは、不可能であるか、少なくともあまりに非効率です。

 そこで、考えました。

 旧司短答式の過去問が法務省のサイトで公開されています。これを使って、問題のパターンを覚えてしまうのが最短の方法ではないでしょうか。

 私も現時点で7年分解いてみましたが、問われている知識内容は毎年同じです。出題判例も何度も重複しています。これを解いて、適宜基本書等で復習するようにしています。 

 

4.まとめ

 長くなってしまいました。

 最後に、短答式の学習のコツは、過去問を分析し、インプットの範囲を最小限に限定することだと思います。過去問は基本を直球で問うてきますし、文章も素直です。最低限の知識さえあれば、"考える"ことによって解答を導けるようになっています。

 肝心なのは、過去問を大切にし、「最低限の知識」の範囲を確定することです。本格的なインプットはその後から始めても遅くないと思います。