1.旧来、想定されてきた構図
(アウトプット)
自 → → → ?
分 ← ← ← ?
(インプット)
「インプットの勉強」と「アウトプットの勉強」、あるいは「アウトプットを意識したインプット」など、「試験」界では旧来から「インプット」、「アウトプット」という言葉が使われてきました。しかし、これらの語の意味するところは必ずしもはっきりと意識されてこなかったように思います。
これは私の所感ですが、「インプット / アウトプット」という語が語られるとき、人は知らず知らずのうちに上記のような構図を思い浮かべていたように思います。すなわち、上記の図では、インプットとアウトプットは対立するベクトルとして捉えられています。そして、アウトプットは、多かれ少なかれインプットした知識を「吐き出す」ものとして認識されてきました。
しかし、よく考えてみるとこの構図には大きな誤りがあります。
第1に、この構図ではインプット先とアウトプット先が曖昧なままにされています。当たり前のことですが、私たちにとってのアウトプット先は「試験」です。では、インプット先はというと、当然「試験」以外のものです。この点で、上記の図のような対立したベクトルは成り立たないことがわかります。
第2に、実際上も「試験」では、インプットした知識を(そのまま)吐き出すことは求められていません。論証パターンの弊害を持ち出すまでもなく、新「試験」ではますます現場思考が求められています。
2.新たな構図の提案
そこで、「新た」かどうかはわかりませんが、「インプット / アウトプット」という語を使うとき、両者を明確に区別して、次のような構図を想定してはどうでしょうか。
・アウトプット
・インプット
外界 →→ 自分
・インプット / アウトプット
3.インプット / アウトプットの概説
(1) アウトプット
アウトプットとは、自分と「試験」との間で行なわれるやり取りの全てを指します。
過去問の答案を書くことはもちろんアウトプットに当たります。しかし、それにとどまらず、「趣旨」や再現答案を読むこともここでいうアウトプットに当たりますし、「試験」の分析に役立つ限り、合格者ブログや受験雑誌を読むこともアウトプットに当たります。
これに対し、答案を書くことが常にアウトプットに当たるわけではありません。「院」の期末試験や予備校作成の問題を解く場合、2時間という同じ時間制限が設定されている限りで、「試験」本番を想定したアウトプットと言うことはできます。しかし、その問題の分析や復習をしたとしても、「試験」の分析に関係しない限り、それはインプットの分野に含まれます。
(2) インプット
インプットとは、「試験」の勉強からアウトプットを除いた全てを指します。
4.構図を転換させる意義
旧来、アウトプットの意義が「書く」ことのみに限定されてきた結果、「試験」の分析という、アウトプットのもう一つの側面が軽視されてきたのではないかと思います。その結果、インプットの勉強も、アウトプットによる分析を踏まえない的外れな方向に向かいがちでした。典型的には、学説の勉強です。
構図を転換した結果、「アウトプットを意識したインプット」の意味するところが見えてきます。それは旧来の理解のように、書きやすい形で記憶しよう、ではありません。「試験」において求められている知識(のみ)を記憶しよう、です。あくまでアウトプットによる分析が先に来なくてはいけません。
5.まとめ
インプット / アウトプットの再定義、と書きましたが、ここで意図しているのは主としてアウトプットの再定義です。
上のような意味でのアウトプットの重視は、合格者の話とも合致します。とりわけ、2回目ないし3回目で合格した「リベンジ合格」の方は、口を揃えてアウトプットの重要性を説きます。過去問演習が足りなかった人は過去問を書く時間を増やし、「趣旨」の読み込みが足りなかった人は「趣旨」を徹底的に読み込んで、翌年の(上位)合格を勝ち取っています。
「試験」本番まで残すところ17日となりました。多くの方はインプットのまとめ作業に入っている時期かと思いますが、ここでもう一度自分のインプット / アウトプットのバランスを再点検してみてはいかがでしょうか。